嘘つきは恋の始まり

嘘つきは恋の始まり “The Last Word”

監督:ジェフリー・ハーレー

出演:ウェス・ベントレー、ウィノナ・ライダー、レイ・ロマーノ、
   ジーナ・ヘクト、A・J・トラウス、キャサリン・ボシェール、
   ブレンダン・ミラー、ジョン・ビリングスリー

評価:★★★




 青年の職業は遺書の代筆屋だ。自殺願望のある者たちの最期の言葉を書き連ねることで飯を食っている。インターネットが窓口になっていることから察するに、軽く引きこもり気味と言って良いかもしれない。人生に絶望した者たちとばかり会う毎日。聞かされるのはネガティヴな言葉の洪水。考えただけで気が滅入ってきそうだ。

 ところが、これが陰気にならないから面白い。そうなのだ。どんどん落ち込んでしまってもおかしくない状況下だと言うのに、青年が冷静さを崩さないからか、それとも色合いに透明感があるからか、画面から受け取るのは低温の心地良さなのだ。写真や留守電の声、CDやラジコン…誰の生活にも身近にあるだろうものが不思議な安らぎをもたらしている。低温でも温くはないのが重要だ。あくまで不快さ、気持ち悪さはない。これが伝ってくるところがミソ。

 元々は作家志望だったこともあり、青年のセリフが詩的なのにも、さり気なく心を掴まれる。ミラーやブルックらの引用も愉快だけれど、普段の会話に出てくる言葉さえも、詩的なリズムを作り出している。思わず書き留めておきたくなるような気の利いた言葉。口から出たそれが、調子をとりながら耳からだけでなく、身体全体に沁み入る。

 言葉の発信源となるのはウェス・ベントレーだ。ヒゲとボーズというスタイルはなんだかクマ系のオッサンのようだけれど、さすがに身体の動きが美しくて、下手をするとスカした印象を与えるかもしれないセリフをしっかり自分のものにしている。目周りの暗さも役柄にフィットしている。画面に低温の魅力が出ているのは、彼のパーソナリティに合致していることも大きいはずだ。

 ただ、ヒロインのウィノナ・ライダーとはあまり相性が良くないかもしれない。押せ押せで登場するライダーは、昨今のイメージもあり、「若い男ハンター」風。もう後がないのよ的に切羽詰まった感じが目に表れているのが、妙に怖い。物語上で嘘をつくのはベントレーの方なのに、ライダーの迫力のせいで、すっかりベントレーに同情してしまう。髪を後ろにまとめると、やたらいしだあゆみに似ているのはなぜ。

 『嘘つきは恋の始まり』は「死」の匂いが濃厚に漂うところから始まり、「生」を感じさせて決着する。「生」と「死」は正反対のものだけれど、同時に隣り合わせでもあり、非常に近い距離にある。それを示唆する結末は、悪ノリが過ぎた嫌いがある。ここは素直に気持ち良く切り上げても良かったのではないか。せっかく控え目に進んできた物語が暴走してしまったような印象。低温の魅力もすっかり吹き飛んでいる。この後青年が、反動で死にたい気分にならないか心配だ。





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