ストーカー

ストーカー “The Resident”

監督:アンティ・ヨキネン

出演:ヒラリー・スワンク、ジェフリー・ディーン・モーガン、
   リー・ペイス、クリストファー・リー、アーンジャニュー・エリス、
   ショーン・ロサレス、デボラ・マルティネス

評価:★★




 ブルックリン橋の近くにあるアパートに越してきた女が、毎日の生活を何者かに覗かれる。オーナーだろうか。その父親だろうか。別れた恋人だろうか。よくある題材ではあるものの、真っ先に思い出すのは「硝子の塔」(93年)だ。シャロン・ストーンが高層マンションで怪事件に巻き込まれるスリラーで、その際ストーンはハイテクモニターにより部屋の隅々を覗かれていた。リメイクという言葉はどこにもないものの、『ストーカー』の設定はまるで同じだ。違うのはアパートが改修中でボロボロという点、そして管理人が若いハンサムではなくゴリラ系マッチョという点ぐらいか。

 「硝子の塔」がどこか浮世離れした空間になっていたのに対し、『ストーカー』はぐっと現実感を大切にした空間になっている。衣食住と密着した風景。至るところに汚れがあるし、ハイテク機器とも無縁。電車が通れば地震のように揺れ、バスタブも美しいとは言い難い。あくまで身近にある恐怖を目指している。絵空事ではなく、本気の恐怖。

 そうしたらなんと、犯人の変態性をねっとり描く方向に走ってしまうから驚いた。まあ、人様のプライヴェートな空間を覗こうというのだから変態であるのも当然かもしれない。ただ、あれだけ意味深に周辺人物を見せておきながら、それを全く引っ張ることなく犯人を明かし、その粘着的な体質を執拗に描く必要はあったのかどうか。ヒロインが戦う物語というよりは、いつの間にか変態日記的色を濃くしていく。

 そうして念入りに変態を探っていったら、思いがけずスリラーではなくコメディになってしまったのがいちばんの誤算だろう。安アパートならではのアナログライフ。犯人はそこに付け入り、女に気色悪さを隠すことなく近づいていく。風呂に浸かっているところを穴から眺める。歯ブラシを使う。衣服の匂いを嗅ぐ。ベッドの下で息遣いを感じる。バスタブで自慰行為に耽る。最も笑ってしまったのは、睡眠薬入りのアルコールによりぐっすり寝込んだ女の指を舐めるというヤツ。もちろん犯罪だし、絶対に認めてはいけない行為ではあるものの、やることのイチイチが安っぽくて、なんだか憎めなくなってくるのがバカバカしい。

 犯人の性的欲望の対象になるのは、なんとヒラリー・スワンクだ。フェミニンなところを見せたかったのか、やけにおとなしい佇まいだ。しかし、もちろんこれは演技だった。犯人の正体に気づくやいなや、猛然と立ち向かう。ナイフを振りかざし、釘打マシーンを銃代わりにして犯人を叩きのめす。もちろんその頃には犯人に同情を覚えている。可哀想に…でもスワンクを狙うのが間違いの元なのだ。ジョディ・フォスターだとかデミ・ムーアだとか、大半のハリウッド女優は狙っちゃダメ。中でもスワンクなんて絶対ダメ。女は強いのだ。ゴリラでも勝てないのだ。

 そんなわけでスワンクの「女らしく見せちゃうぞ」作戦は見事に失敗している。最初はいつもよりも肌の色が濃いこともあってエヴァ・メンデスに見えて仕方なかったのだけど、目指したのは「運命の女」(02年)のときのダイアン・レインではないかと思いついた。後れ毛に注意を払ったヘアスタイルも、男と交わるときの表情も、女の性的欲望を淫らに見せる物腰も…。ただスワンクはレインとは違って、色気を滲ませる隙に乏しい。どれだけ肌を露出しようと下着を見せようと恍惚の色を浮かべようと艶が出ない。そんなわけで短く太い指を突きつけられて結局、現実に立ち返ることを余儀なくされるのだった。あぁ、エロティシズムは難しい。





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