恥じらい

 映画を映画館で頻繁に観るようになりたての頃、すなわち高校生の頃、人知れず悩んでいたことがあった。ロマンス映画を一人で観に行くのが恥ずかしいという、実に初々しい悩みである。

 ロマンス物は男友達と一緒に観に行くものではないことは分かっていたし、かと言って一緒に観て不自然ではない恋人など見る影もない。女友達はいたけれど、一緒に観に行かせるのは何か違う気がする。となると当然一人で観ることを強いられるのだけれど、他のジャンルだと全然気にならないのに、ロマンス物だと途端に周囲の視線が気になってしまうのだ。周りの脳天気なヤツらはきっと思うだろう。「わぁ、あの男の子、ラヴストーリーを一人で観に来てるわよ。彼女がいないのね。カワイソー。それとも女の子の心を持った男の子なのかしら。ちょっと気持ち悪いかもしれないわ」。

 ここで思い出すのは、クリスチャン・スレーターとマリサ・トメイが主演した『忘れられない人』(93年)とジョニー・デップとメアリー・スチュアート・マスターソンが主演した『妹の恋人』(93年)である。この2本が封切られた当時は、「デートムービー」という言葉が頻繁に使われていた。それに乗っかったのか、「デートムービー」であることを前面に押し出した宣伝で、なおかつ二本立て上映だったのだ。出ているスターは好きな者ばかりだけれど、この二本立てをたった一人で観に行くのは、なんとも勇気がいる。

 それでも映画館までいそいそと出かけていった。だが、チケットを購入する勇気がどうしても出ない。何しろ周りはカップルか女グループばかりだ。カミサマよ、この中に一人で飛び込んで行けというのですか。それは少年に与える試練としては大き過ぎるのではないですか。少年はチケット窓口付近を行ったり来たりしながら、様子を窺った。平然とチケットを購入していく者たちを恨めしく思いながら、うろちょろうろちょろ。はっきり言って、この振る舞いの方が恐ろしく怪しいと思うのだけれど、少年はそれに気づかない。そして気づかないまま結局チケットは買えず、無情にも上映はスタートしたのだった。少年は勇気のない自分を哀れみながら、家路についた。

 あれから15年。30代に入り、もはや周囲の目など全然気にならない図太さを身につけた。『セックス・アンド・ザ・シティ2』(10年)を一人で観に行くことに躊躇いなど全くないし、『ラスト・ソング』で周りを10代の女の子に囲まれてもなんとも思わない。一人って気楽だー、とむしろ平然としているくらいである(いや、誰かと一緒に観るのも楽しいものだけれど)。そしてこれはこれでなんだか危ないかもしれないとも思ったりするが、まあ、気にしないことにしよう。あの頃の自分よ、もう少しの我慢だ。よく分からないが。

 余談になるけれど、『ラスト・ソング』を観たとき、先着プレゼントでそのポスターを貰ってしまった。ロマンス映画を一人で観に行く術は身につけたが、この映画のポスターを部屋に飾る勇気は、ない。……………。





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