タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密

タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密 “The Adventures of Tintin”

監督:スティーヴン・スピルバーグ

声の出演:ジェイミー・ベル、アンディ・サーキス、ダニエル・クレイグ、
   サイモン・ペッグ、ニック・フロスト、トビー・ジョーンズ、
   ケーリー・エルウェス、トニー・カーラン、セバスチャン・ロッシェ

評価:★★★




 ベルギーで生まれた原作は世界中で愛されているそうで、それなのによく知らない。冒頭、主人公のタンタンが描いてもらった似顔絵こそが原作のタンタンなのだろう。すっとぼけた絵柄が興味をそそる。タンタンは少年ジャーナリストで、その相棒はフォックステリア犬のスノーウィだ。彼がノミの市でユニコーン号という名の軍艦の模型を手に入れたことから予期せぬ陰謀に巻き込まれていくという話。なるほどアニメーションで描くにはうってつけの題材。そしてあのスティーヴン・スピルバーグが目をつけるのも納得できる。

 そうなのだ。『タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密』はスピルバーグによる初めてのアニメーションだ。映画の世界に夢と希望を詰め込むことを使命としているスピルバーグ(時折極端にシリアスな映画に走ることもあるけれど、あちらは本来の彼ではないだろう)。時代背景がはっきりせず、しかしどこか懐かしさを感じるところがあり、そしてハイテクとは切り離された世界にはロマンティシズムが横溢する。スピルバーグがそこにイマジネーションを目一杯に注ぎ込む。

 アニメーションという表現法を選んだことで、スピルバーグが最も力を入れているのは(この言葉が正しいのかどうかは判断に迷うものの)カメラワークだろう。実写で描くにはどうしても無理が出てくるアクション描写を畳み掛け、画面に躍動感をこれ以上ないというくらいに焼きつけている。一連のアクションのスタートダッシュを切るのはスノーウィだ。人間とは違う動きで、違う目線で突っ走り、それにつられるようにタンタンやその周辺人物も豪快なアクションに転じていく。その際カメラはまるで最後の登場人物にでもなったかのように、キャラクターを懸命に追いかける。縦にも横にも斜めにも動き、その躍動を見逃さない。回り込んだり、俯瞰で見たり…静の場面でも落ち着いてなんかいられないとばかりにそわそわしているのが可笑しい。

 キャラクター同士が追いかけっこする場面が何度も出てきて、その度に興奮を覚える。スノーウィのちょこまかぶりも楽しい。しかし、何と言ってもいちばんの見せ場となるのは、辿り着いたモロッコの坂の街で見せるアクションだろう。謎の鍵を握る羊皮紙を何とかものにしようと駆け回るアクション。タンタンら人間はもちろんのこと、犬もハヤブサも大暴れ。風に舞い、水に落ち、建物を突っ切る。スピルバーグはこれを所謂「長回し」で見せている。羊皮紙から目を離さず、それゆえ画面に映る人物は次々入れ替わる。誰が最終的に羊皮紙を手に入れるのか、シンプルなサスペンスを軸にイマジネーションを爆発させる。

 この映画が絶えず飽きることがないのは、映画において最も重要な「動く」ということに着目しているからだろう。場所は陸海空と次々変わっていくし、乗り物も自動車、バイク、飛行機、ボート、軍艦とやはり次々変わっていく。その上、画面にアナログな匂いがある。画面の色合いが案外大人っぽいのも「動く」ことをさり気なくサポートしている。ドタバタに走ってもバカに映らない。

 問題はまたしてもパフォーマンス・キャプチャーだ。俳優の実際の演技をコンピュータを駆使してアニメーション化するという例の作業がなされていて、そうして出来上がった人間が結局アニメーションと実写の合いの子のようで気持ちが悪い。表情が中途半端に生々しい。ジェイミー・ベルやアンディ・サーキス、ダニエル・クレイグといったスターが使われ、しかしその面影はどこにもない。それならば無名の役者を使っても何の問題もないだろうに、なぜ彼らでなければならなかったのか。同じ手法が使われた「ランゴ」(11年)の主人公カメレオンがジョニー・デップそのものに見えてくるというのとは、全然使用の意味が違うだろう。おそらく原作のイメージにも気を遣った作りになっている。それならばパフォーマンス・キャプチャーである必要性をますます感じない。生身の俳優の持ち味がまるでない。

 ただ、スノーウィの造形や動きはとても楽しい。ふわふわもこもこの毛で覆われ、つぶらな瞳で懸命にタンタンについていく。意外なほどタンタンの力になっているのも注目で、彼のアシストなくしてタンタンは目的地に到着はできなかったに違いない。彼はどうやって生み出されたのだろう。おそらくパフォーマンス・キャプチャーではないはずだ。実際の犬の動きとは異なる、アニメーション的な処理がなされている。もちろんそれで、正解だ。可愛くて、抱き締めたくなる。





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