フェイク・クライム

フェイク・クライム “Henry's Crime”

監督:マルコム・ヴェンヴィル

出演:キアヌ・リーヴス、ヴェラ・ファーミガ、ジェームズ・カーン、
    ピーター・ストーメア、ジュディ・グリア、ダニー・ホック、
    カリー・グラハム、デヴィッド・コスタビル、
    フィッシャー・スティーヴンス、ビル・デューク

評価:★★




 何とも気の抜けた話だ。何しろ主人公の頭のネジが緩んでいる。仕事を適当にこなし、妻の言うことは聞いているんだか聞いていないんだかよく分からない。そんなある日、騙されて知らぬ間に銀行強盗の運転手となり、とっ捕まり、しかし真実は吐かず、刑務所でのんびり過ごし、妻に浮気を切り出されてもすんなり受け止め、出所してからは今度は自ら銀行強盗を計画する。

 こういう男だと普通はイライラしてしまうものだと思うけれど、演じているのがキアヌ・リーヴスだから寛容な気分になる。リーヴスの掴み所のない飄々とした佇まいを通して男を見ると、暖かな日の白い雲のように、眺めているだけで心が落ち着いてくる。イライラが微笑み、或いは微苦笑に変わる。演技云々とは全然関係ない。その不器用さが大概の小さなものを笑い飛ばしてしまうのだ。まあ、いいじゃないかと。

 だから主人公が銀行強盗を計画するのも、自分を轢いた高飛車な女優に恋をするのも、刑務所メイトをチームにスカウトするのも、仲間がやたら増えていくのも、なんとなく受け入れられる。リーヴスならそれでもありだろうと思わせてしまう。寓話性には乏しいのに、変でも良いじゃないかと思わせてしまう。

 『フェイク・クライム』はリーヴスの存在が全てのような映画で、他に観るべきところはあまりない。話の細部は退屈なご都合主義に満ちているし、見せ方にも工夫はない。アントン・チェーホフの「桜の園」を取り上げた舞台がリーヴスとヴェラ・ファーミガの恋にリンクしていくというのも巧くない(と言うか、あまりに強引)。リーヴスがいなければいずれもバカらしくて付き合ってられないだろう。でも憎めない。バカな子ほど可愛いなんて良く言うけれど、それに通じる道を突き進む。その中心にいるのはやっぱりリーヴスだ。

 刑務所メイトのジェームズ・カーンはさり気なく良い味を出している。リーヴスのヘタっぴな演技を優しくサポート、作品にある程度の重みを与えている。父子関係に似た絆が生まれたのもカーンのおかげだろう。

 つくづく思うのは、リーヴスはヘタクソなままで良いということだ。不器用にぎこちなくいてくれるだけで、でもそれにホッとする。もちろん役柄や作品にハマらなければ、悲劇的な事態となるだろうけれど…。『フェイク・クライム』は幸運な例なのだ。出来が悪くても、チャーミング。終幕に唐突にロマンティック・コメディになってしまっても、あぁ、それで良いのだろう。作品自体がまるでリーヴスの分身のように思える。舞台となる劇場をもっと魅惑的に描けばムードが出たのに…なんて嘆くのは野暮というものなのだ。





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