ラブ・アゲイン

ラブ・アゲイン “Crazy, Stupid, Love.”

監督:グレン・フィカーラ、ジョン・レクア

出演:スティーヴ・カレル、ライアン・ゴズリング、ジュリアン・ムーア、
   エマ・ストーン、ケヴィン・ベーコン、マリサ・トメイ、ジョナ・ボボ、
   アナリー・ティプトン、ジョン・キャロル・リンチ、ジョシュ・グローバン

評価:★★★★




 25年連れ添った妻にディナーの席で突然離婚を突きつけられる冴えない男を、バーでナンパに励むことを日常にしているチャラチャラ男が改造する。改造対象となるのがスティーヴ・カレルだから劇的な変化は望めない。しかし、それでもやっぱり格段に良くなる。確かに洗練されていくのだ。カレルは自分を磨き始めることで、その内面を変化させていく。グレン・フィカーラとジョン・レクアはそれを見逃さない。

 前半を引っ張るのはカレルが変わっていく過程だ。「休日の父ちゃん」でももうちょっとましな格好をするだろうに、見るからにヘンテコなカレルが少しずつ変化していく。サイズの合っていないスーツを着用、履くのはそれには全く不釣り合いの汚れたシューズ。アルコールをストローで呑み、口から出てくるのは他人が聞いても面白くない愚痴ばかり。チャラチャラ男がまず外見に狙いを絞るのが正解だ。40代という年齢に見合ったファッションに身を包むために、金を惜しまない。ヘアスタイルも変える。眉毛も整える。次から次へと金は羽根をつけて飛んでいくけれど、まずそこを改善しなければ、先へ進めない。その後はチャラチャラ男のナンパ術を観察することでそのテクニックを学ぶ。イメージトレーニングも重要だ。それと平行するように始まるのは筋力トレーニングで、身体を磨き上げることでカレルの「男」が上がっていく。人が努力して魅力的になっていく様は楽しいものだ。

 振り返ってみると、『ラブ・アゲイン』の物語はご都合主義が幅を利かせている。特に人間関係の部分で唐突さが拭えない。でも、それが気にならない。むしろ愉快だ。これはもう各キャラクターへ注がれる愛情によるところが大きいだろう。どの人物にも平等に注がれる愛。憎まれ役になってもおかしくない母親(エレガントなジュリアン・ムーア)も、彼女なりの思いを抱えていて、決して安易に離婚という結論を導き出したのではないと分かる描き方。ムーアの浮気相手のケヴィン・ベーコンやカレルが一夜限りの関係を持つマリサ・トメイも「抜け方」が快感だ。

 カレルの変身がいよいよ完成に近づいたところで、映画は別の表情を見せ始める。自分を磨くことで愛情を取り戻そうとする男の物語の殻を突き破る。カレルの周囲の人間たちのそれぞれの想いが膨らんでいき、遂にそれが交錯を始めるのだ。まだ愛している人に立ち向かう愛。自分を見つめ直す愛。新しい自分を発見する愛。意外な一面を知ることで惹きつけられる愛。相手にされていない人を想い続ける愛。大切にしていた密かな愛を解き放とうとする愛。いずれも真心がこもっている。その結果、誰かを傷つけてしまうかもしれなくても、彼らは愛を諦めない。ロマンスを語る醍醐味が溢れていく。

 ある「事実」が明らかになる件にはすっかりやられた。気づかなかった事実もさることながら、畳み掛けられる愛の彷徨が可笑しくて可笑しくて、そしてせつなくて。身体を張ったドタバタを見せながら、ちゃんと心のドタバタも忘れていない。力のある俳優たちが絶妙の間を作り出しながら愛を爆発させていくところに、悲劇的な方向に向かってしまったとしてもカタルシスがある。

 この爆発で登場人物の想いはバラバラになってしまう。そこで一件落着になってもおかしくないところだったのに砕け散ってしまう。どうやってまとめるのかと思ったら、息子の卒業式という舞台で、なかなか胸を打つ展開があるのだ。それぞれの想いが尊重され、かつ美しく掬い上げられる。ハートに訴える。温もりが心地良い。

 これまでとは異なるアッと驚くイメージで登場、目をクギづけにするのはライアン・ゴズリングだ。演じるのはなんとチャラチャラ男。これまでの内向的な印象を大きく打ち破るプレイボーイぶりが楽しい。女を気持ち良くする言葉を知り抜いている。洗練を画に描いたようなファッションでキメる(尖がり靴をスマートに履く!)。意表を突いて情に厚く、惚れた女には一直線。思いがけず本気の恋に落ちてしまうのが可笑しい。自分の家に招いたはいいが、喋り疲れてうっかり眠ってしまうのも可笑しい。気まぐれなネコのような愛らしさのエマ・ストーンとの相性も抜群。ピカピカの身体は、男たるもの、なぜ己を鍛える必要があるのかを雄弁に語る。ゴズリングを眺めていると、どうして彼がカレルを気にかけるようになったのか、朧気に見えてくる。粋な役者になったと嬉しくなる。





blogram投票ボタン

ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ