しあわせの方程式

しあわせの方程式 “An Invisible Sign”

監督:マリリン・アグレロ

出演:ジェシカ・アルバ、クリス・メッシーナ、ベイリー・マディソン、
   J・K・シモンズ、ソニア・ブラガ、ブライス・オーファース、
   ジョン・シーア、メアリー・ルイーズ・バーク、アシュリー・アトキンソン

評価:★




 ジェシカ・アルバをブサイクに撮るのは容易いことではない。だって誰が見たって可愛らしいのだもの。健康的な小麦色の肌。ドングリのような目。ぷっくりした唇。均整の取れたスタイル。装飾の要らない輝き。性格も良さそうだし、いつだって笑顔なのも好ポイント。アカデミー賞には絶対に引っ掛からないような作品ばかりに出ているのも偉い。人工臭のない親しみやすさに包まれて、アルバは今のハリウッドで一二を争う「可愛い女優」のポジションを揺るぎないものにしている。

 『しあわせの方程式』はそういう特質を持つアルバを可愛らしく撮れなかったという点で、記憶される映画かもしれない。美しいブロンドをブルネットに染めたおさげ髪。常に隠されたオデコ。暗い色ばかりの衣装。冬だから露出もゼロ。他人と口を利くのも億劫に感じるくらいに内向的。大好きなのは「数字」。こういうとにかく地味なヒロインをアルバは、ほとんどすっぴんで演じている。

 もちろんアルバはアルバ、そこいらのケバケバしいのとは素材が違うからすっぴんでも愛らしくなくはない。ただ、作り手がほら、地味という点だけを頭に置いて撮っているものだから、眺めているだけで楽しいというところには届いていない。フィービー・ケイツ失敗版みたいに見えるときがあるくらいだ。物語が進むにつれて可愛らしくなるのではないかという期待も粉々に打ち砕かれる。気がつけばアルバも三十路。いつまでも可愛い可愛いとだけ言われているわけにもいかないのだろう。でも観る側としては、一分一秒でも長く、可愛らしくいて欲しいのだ。

 しかもアルバは子役に喰われている。ひょんなことから算数の教師として働くことになった小学校の生徒たちのこまっしゃくれた演技。アルバの幼少時代を演じるベイリー・マディソンのふてぶてしいまでの存在感。特にマディソンのニュアンス豊かな表情は、アルバの演技力の上を軽々飛び越えていく。マディソンが成長するとアルバになるという、連続性の一切を無視したとんでも配役と揃って、踏んだり蹴ったり。

 作り手は一体全体何を描きたかったのだろう。普通、どんな駄作でも伝えたいメッセージの察しはつくものだろうに、この映画はそれすらも分からない。父親が心の病になったことをきっかけに数字にのめり込む。自分の殻に閉じこもってばかりの状態を心配されて家を追い出される。思いがけず教師になる。生徒たちにバカにされる。慕ってくれる数少ない生徒の母がガンだと判明する。同僚の教師に迫られるもイジイジして受け入れられない。子どもの頃の恩師にやたら執着する。終幕になるとこうしたバラバラのエピソードが強引にまとめ上げられていくも、一向に軸だけは見えてこない。ヒロインの世界の描き込みがぼやけている。

 演出も真面目に語りたいのか、それとも無理矢理笑わせたいのか、はたまた思い切り泣かせたいのか、さっぱり分からぬ。父の病から学校に入るまでは妙に深刻だけれど、同僚を意識し始めてからは突然喜劇色が強くなる。かと思えば、終盤は病や死に絡んだ色が前面に出てきて泣かせにも走っている。イメージがどんどん変わっていく。それが面白いというよりは、当惑を誘う。精神不安定なのはヒロインではなく作り手ではないかと余計な心配をする。

 「家族が団結すればうまくいくものだ」。「人生は数学よりずっと難しい」。堂々語られる言葉は立派なようで、言われなくても誰もが承知しているレヴェルのものばかり。それらが溢れるだけで、結局物語は水浸しのままだ。もっともらしくそれを受け入れるアルバが地味なだけじゃなく、単なる「面倒臭い女」に見えてくる。





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