モンスター上司

モンスター上司 “Horrible Bosses”

監督:セス・ゴードン

出演:ケヴィン・スペイシー、ジェニファー・アニストン、コリン・ファレル、
   ジェイソン・ベイトマン、チャーリー・デイ、ジェイソン・サダイキス、
   ジェイミー・フォックス、ドナルド・サザーランド、ジュリー・ボーウェン

評価:★★★★




 一度会っただけでは印象に残らない人がいる。別れた数秒後には「どんな顔だったっけ?」。まことに申し訳ないけれど、記憶中枢に書き込まれないのだから、仕方がない。実は映画界でもそういうタイプは少なくない。この物語の主演俳優たちは、まさにソレ。ジェイソン・ベイトマン、チャーリー・デイ、ジェイソン・サダイキス…揃いも揃って記憶に残らない。「絶対良い人」の安心感はあっても、大スターにはなれないだろう。

 ではどうして彼らは起用されたのかというと、結局才能に尽きる。それもコメディの才能。彼らはほとんど一緒の場面に登場、常に騒がしい掛け合いを見せるのだけど、これが面白い。冷静なベイトマン、チョコマカしているデイ、変に思い切りの良いサダイキス。バランスが取れていて、セリフとセリフが激しく被さっていく場面の呼吸はほとんど芸術。それなのに記憶に残らないというのは、うん、これも持ち味だ。ひょっとして彼らを前提に書かれた本なのではないか。

 そうなのだ。『モンスター上司』は配役がとにかくサイコーだ。違う職場で働く主人公たちは揃って上司に恵まれていない。まとめて上司を殺してしまおうというのがストーリーになる。誰が考えても鍵を握るのは上司陣の配役で、当然の作り手も承知、大スターが当てられている。しかもパーフェクトなハマり具合。主人公たちを美味そうに喰っていく。

 コリン・ファレルは「Dipshit Cockhead Son」。オヤジから引き継いだ会社を何の考えもなしに動かしている。その日の気分で行動する、常に行き当たりばったりの愚か者。マリファナ三昧の男を加トちゃん風ハゲヅラで演じているファレルに、いつものタフなイメージは微塵もない。随分思い切ったものだ。

 しかし、「Evil Crazy Bitch」のジェニファー・アニストンはもっとイイ。年中発情女で、助手にセクハラ攻撃の連打を浴びせるのが趣味。汚い言葉、いやらしい言葉だけでは飽き足らず、身体を使って攻めてくる。垂れた乳をチラチラさせるのなんてお茶の子さいさい。アニストンはレイチェルイメージに唾を吐き掛けて暴走する。開き直ったか、よくやったじゃないの。

 ところが、ケヴィン・スペイシーはその上を行く素晴らしさだ。「Total Fucking Asshole」なスペイシーは、陰険を画に書いたような男を演じるのに、持ち前の粘り気さを最大限活用する。序盤の部下をねちねち甚振る場面は見応え十分。「陰険」を炙り出すのはもちろん、そこに抱腹絶倒の「笑い」を滑り込ませるのだ。ホンモノの喜劇センスがなければ成立しない。スペイシーがいることで、役者同士が互いを引き寄せ合う吸引力も増している印象すらある。分かってはいたけれど、アッパレな役者だ。だてに300年ハゲてはいない。

 他愛ない話には違いないものの、案外脚本が頑丈だ。計画実行中の凡ミスがターゲットの暴走を生み、それが主人公たちの混乱を煽り、警察が介入し、仲間の信頼関係を揺さぶり…という基本の流れがしっかりしているし、男特有のバカさ加減も含めて、思いがけない伏線も二重三重に活かされている。物語の全体像はバランスを敢えて歪にしているようなのも感心する(きっちりし過ぎていない)。

 上司に恵まれない人は、世に腐るほどいるはずだ。状況を打破したい彼らの参考にはならないだろうし、エールを贈るというのからもちょっとズレている。でも笑って笑って笑って、スカッと爽快。こういう喜劇がひょっこり顔を出すから、アメリカ映画は憎めない。





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