ウィンターズ・ボーン

ウィンターズ・ボーン “Winter's Bone”

監督:デブラ・グラニク

出演:ジェニファー・ローレンス、ジョン・ホークス、
   シェリル・リー、デイル・ディッキー、
   ギャレット・ディラハント、ローレン・スウィートサー、
   アイザイア・ストーン、アシュリー・トンプソン

評価:★★★★




 17歳と言ったら、誰もいない海で、ふたりの愛を確かめたくて、あなたの腕をすりぬけてみる頃だ。『ウィンターズ・ボーン』のヒロインであるリーは、そんな夢と希望とは無縁のところで生きている。父が失踪、母は心を病み、幼い弟と妹は一人では食べていけない。必然的に彼女が大黒柱になってしまう。格差社会が叫ばれて久しいけれど、そんなのとも別次元。デモに参加する暇があるのなら、リーは1ドルでも多くの金集めに奔走するだろう。

 描かれるのは極めて厳しい貧困層の世界だ。嫌いな言葉を使うなら社会の「底辺」に限りなく近い。ミズーリ州の山岳地帯。木々が生い茂る寂しい大地。金はなく、食い物もなく、希望すらない。リスを捕まえて食料にし、隣人からの多少の施しを受け、命を繋いでいる。生きるためなら犯罪にだって手を染める者もいる。一帯には麻薬が蔓延る。負のループから抜け出せない。いや、抜き出す気力もない。中でもヒロインは失踪した父を見つけなれば、家と土地を奪われる状況に置かれる。覚悟を決めた彼女は父の行方を追い求める。もちろんそれは地獄を見る旅になる。

 ギョッとするのは血縁関係があったとしても、容赦なく切り捨てられる現実だ。そこには貧乏人同士の連帯感も見当たらない。主人公一族には「掟」が存在し、それこそが絶対的なもの。破るときは死を覚悟する必要がある。それが生きる術なのだから仕方がない。

 そんなわけで、ほとんど気が滅入る現実ばかりが目に飛び込んでくる。そこに救いがあるとするならリーを演じるジェニファー・ローレンスの目の力だろう。大の大人と渡り合う度胸とふてぶてしさ、どんな状況下でも折れない強い心。殴られても蹴られても、そこから逞しくしたたかに這い上がる。プライドも捨てはしない。ローレンスはその不屈の精神を目に込める。貧乏を極めている割りに、肉付きがよろしいのには目を瞑る。

 幼い子どもたちもささやかな希望に見える。10歳にも満たないだろうに生きるため銃の扱い方を仕込まれる。動物の皮を剥ぐ。薪を割る。単調な毎日。それでも彼らは姉を信じている。最近はいとも簡単に子どもを幸せの象徴のように持ち上げる風潮があるけれど、それとはまるで異なる、ホンモノの希望。小さくても、なんて温かい。

 ヒロインの最大の試練は終幕にやってくる。夜中、ボートに乗って辿り着いた沼の真ん中から、あるものを拾い上げる場面だ。拾い上げるだけでなく、さらに無情な作業も強いられる。このときヒロインは初めて涙を見せる。まるで張っていた糸が切れたようだ。胸にグッとくる。リーを抱き締めたくなる。そして非情な現実を恨めしく思う。

 ヒロインは軍隊に入りたいと思っている。愛国心からなんかではない。入隊することで4万ドルが支給されるからだ。普通なら恋をしているだろう。勉強に精を出しているだろう。自分磨きのレッスンに勤しんでいるかもしれない。なのに彼女は家族を支えることを強いられる。生きる苦しみを知っている少女は後ろを振り返らない。生命力が神々しくさえ見える。





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