ミッション:8ミニッツ

ミッション:8ミニッツ “Source Code”

監督:ダンカン・ジョーンズ

出演:ジェイク・ギレンホール、ミシェル・モナハン、ヴェラ・ファーミガ、
   ジェフリー・ライト、マイケル・アーデン、キャス・アンヴァー、
   ラッセル・ピーターズ、スーザン・ベイン

評価:★★★




 目覚めると列車の中。目の前には美しい女が座り、親しげに話しかけてくる。兵士である自分はアフガニスタンでヘリコプターに乗っていたはずだったのに、何故。慌ててトイレに駆け込むと、鏡に映るのは自分とは違う男だ。何が起こっているのか理解できないまま、その直後彼は爆風に包まれる。列車に仕掛けられていた爆弾が爆発したのだ。

 何の説明もなくいきなり始まる物語。もちろん狙い通りだ。『ミッション:8ミニッツ』は体感型スリラーと言うのが相応しいSFで、主人公と観客の距離が極めて近い。主人公と同じ状況下に置かれることで、その心象が痛切に突き刺さってくる仕掛けだ。2回観ればより世界観が理解できるとは思うけれど、それよりも主人公の心理を直に感じられる一度目の鑑賞にこそ、醍醐味が隠れている気がする。

 SFはしっかりとした創り込みが大切になる。センスのない監督なら序盤でそれを無理矢理説明してしまうところ(テロップで済ませる愚か者もいる)だけれど、ダンカン・ジョーンズはそんな野暮な映画人ではない。焦ることなく少しずつ情報を落としていく。

 主人公はある任務に就いたところだ。テロ事件の情報を掴むため、爆発した列車に乗っていた男の意識の中に入り込み、それを探るというもの。時間はない。8分後には爆発で死んでしまい、現実に引き戻される。死ぬ度に誰もいないポッドの中で目覚める。そこにあるモニターを通じて、ミッション担当者と会話し、それがこの世界観の手掛かりとなる。かなり入り組んだ構造になっているものの、その全貌が見えてくるあたりはなかなかの快感。観客に考える時間を与える効果もある。おそらく細部を突き詰めると矛盾も出てくるだろうけれど、それを気にさせない。

 「月に囚われた男」(09年)を観れば一目瞭然、ジョーンズ映画では哲学性が大きな意味を持つ。複雑なルールに縛られた世界でシンプルなミッションが繰り広げられる中に、ジョーンズの人生観が立ち上がる。生きること死ぬこと。限りある時間。後悔と赦し。正義と大義。絶望と希望。組織とそれを形作る人間。とりたてて大袈裟なメッセージはなくとも、語りのペースが優雅なため、じわじわと胸に染み入る。

 ただし、画面を眺めているだけでは何も入ってこない。ここに映画の弱点が潜んでいる。一度見聞きしただけでは理解が難しい物語ゆえ、普段映画を観ているときには使わないような見方を強いられる。簡単に言うなら、余計に頭を使うのだ。そして「頭を使う」ということは「心で感じる」のと相性がよろしくない。主人公が今どういう状況で何をしようとしているのか。組織が彼をどう扱うつもりなのか。そもそも他人の過去の意識に入り込むというのはどういうことなのか。謎が謎を呼ぶ設定と展開ゆえに、常に頭をフル回転させなくてはならない。ちょっとの油断が話から振り落される結果を招く。それに気を取られているとしかし、登場人物の心までもを頭で考えてしまい、心で感じるのを受け取るのを忘れるという愚かしい事態を誘発するのだ。理屈と心理模様が巧く溶け合わない。

 ふと「マトリックス」(99年)を思い出す。あちらも創り込まれた世界観が、必要以上の頭の稼動を強いていた。ただ、それをヴィジュアルのインパクトにより忘れさせる力技を見せてもいたではないか。ここにはそれに匹敵するものが欠けている。世界観の創り込みは万全でも、それ以上の広がりに乏しい。ジョーンズ映画ゆえの高いレヴェルでの不満だ。





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