ランゴ

ランゴ “Rango”

監督:ゴア・ヴァービンスキー

声の出演:ジョニー・デップ、アイラ・フィッシャー、アビゲイル・ブレスリン、
   アルフレッド・モリーナ、ビル・ナイ、ハリー・ディーン・スタントン、
   レイ・ウィンストン、ティモシー・オリファント、イアン・アバークロンビー

評価:★★★




 ジョニー・デップがエモーション・キャプチャーにより主人公のカメレオンを演じている理由。それは「ジョニー・デップがカメレオンだったら」という愉快な仮定を映像化するためだ。ただ、厳密に言うなら間違っているかもしれない。と言うのも、ゴア・ヴァービンスキー監督が欲しかったのは、デップはデップでも「パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち」(02年)のジャック・スパロウに扮したデップだろうからだ。まるで酔っ払っているような佇まい、しかし危機的状況では頭をフル回転させてそれを乗り越えるヴァイタリティ。それをカメレオンで観てみたかったのだ。

 果たして『ランゴ』のその狙いは的中する。デップ特有の掴み所のない動きが見事に反映され、声色もデップらしいほの暗さが味となった捻りの効いたもの。本当のカメレオンの動きなんかでは全然ないものの、次第にカメレオンの後ろにデップの姿が見えてくる。尤も、他の役者はデップの演技ほどの効果は上げていない。デップのために、スパロウのために、エモーション・キャプチャーを取り入れたような印象だ。ヴォイスキャストを考えるとちょっと勿体無い気もするけれど、これが現時点でのこの技術の限界なのだろう。

 デップへの力の入りようは、主人公カメレオン=ランゴのデザインを見ても明らかだ。カメレオン特有のちょっと硬めの皮膚の質感、緑を基調にした微妙な色合い、S字になった首、ポッキーのように細い腕、表情豊かな渦巻状の大きな目。アロハシャツやテンガロンハットもいかにもデップ的。

 しかもそうして出来上がった全体像が、ちっとも可愛くない。可愛くないなんて言うと貶しているみたいだけれど、もちろん褒めている。爬虫類特有の気持ち悪さを再現し、でもだからこそランゴは魅力的だ。アニメーションになると本来の姿が不気味でも醜くても途端に可愛らしくなるものが多い。例えば醜い怪物のはずのシュレックは、映画では全然醜く撮られない。そういう違和感を吹き飛ばすようなユニークさがランゴからは感じられる(時折デップの盟友ティム・バートンの匂いもちらつく)。気持ち悪いままに魅力的なのがお手柄だ。

 このランゴが中心となるアクションもなかなか魅せる。ハイウェイ走行中の事故場面、砂漠でのタカとの攻防、大蛇との対決…いずれもアニメーションならではの独創的なスピード感と編集で、縦横無尽に動き回るカメラワークが痛快そのもの。とりわけほとんど砂埃とサボテン以外何もない砂漠でのタカとの攻防はちょっとした小道具の巧い使い方もあって興奮する。スパロウ的なちゃっかりしたランゴの性格がこのとき手際良く描写されるのも気が利いている。

 思えばヴァービンスキーは、デビュー作として「マウス・ハント」(97年)を手掛けている人なのだ。人間とネズミの攻防を描いた物語に特筆すべきところはなかったものの、ねずみの目線から見た屋敷の美術はなかなかに凝っていた。細部描写に個性を見せるタイプ。逆に言うと、作品規模が大きくなると細部まで目が行き届かなくなり大味になるタイプ。『ランゴ』はその特徴がプラスに出た好例だろう。主人公カメレオンの懲り方がそのまま全体の面白さに繋がっている。

 往年の西部劇へのオマージュやパロディがたっぷり散りばめられているのも嬉しいところ。ハリウッドが生み出した西部劇だけじゃなくマカロニ・ウエスタンへのウインクも次から次へ。「西部の精霊」が出てくる件では思わず目を見開く。ここにロマンや詩情が感じられたら最高だったのだけど、そこまで望むのは酷というものか。





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