トゥー・ラバーズ

トゥー・ラバーズ “Two Lovers”

監督:ジェームズ・グレイ

出演:ホアキン・フェニックス、グウィネス・パルトロウ、ヴィネッサ・ショウ、
    イザベラ・ロッセリーニ、イライアス・コティーズ

評価:★★★




 身も蓋もない言い方をするなら、男一人女二人による三角関係の話。ハリウッドに限ることなく散々語られてきたものと言える。同じ日同じ時間で約束を取り付けてしまう。部屋にいることを知られないようドアの影に隠れる。デート中に意中の相手から電話がかかってきて席をはずす。誰にでも思いつきそうな、ギャグスレスレの小話が紡がれていく。そこだけ取り出せば、確かに安い。それにも関わらず『トゥー・ラバーズ』はリッチな魅力を湛えている。

 ジェームズ・グレイ監督の演出は相変わらず静かなことこの上ない。音楽は滅多に流れないし、静寂な空気には緊張感があり、それゆえに心臓の音がどくんどくんと聞こえてくるぐらいだ。しかも照明が落ち着いている。大半が室内か夜、ほとんどランプの明かりではないかと思えるほどに薄暗い中で語られる。語り継がれてきた絵画でも眺めているような気分を誘う。

 ホアキン・フェニックス扮する主人公はふたりの女の間に置かれる。父の仕事関係の紹介により知り合った女と同じアパートに越してきた不倫中の女。前者とは頭で、後者とは心で繋がっている印象。普通に考えると、心と結びついたところで惹かれている女こそが本当の愛だろうと思う。実際、主人公は不倫女により惹かれていくことが示唆される。ヴィネッサ・ショウとグウィネス・パルトロウという演じる女優のネームヴァリューを考慮しても不倫女の圧勝だろう。ところが、予断を許さない気配が漂う。どちらに転ぶか分からない危うさに支配されていく。

 十二分に効いているのはフェニックスの眼差しであることは間違いない。恋愛衝動や嫉妬、性的欲望といった感情を的確に伝えるのはもちろん、頭と心、その境界を曖昧にする眼差しだ。本来ならば早々にどちらか一方に絞るべきシチュエーションでありながら、女たちへの向き合い方がそれぞれに深刻で、それゆえ恋愛、或いは人間関係はそう単純に糸が解けないことを思い起こさせる。男は自分に都合良くコトを進めているわけではない。

 フェニックスは笑えば笑うほどに孤独が深まっていく。誰にもどうにも止められない。遺伝子の問題で婚約を解消した過去。それをきっかけにした自殺願望。愛する人を見つけてもそれにのめり込めない心情。愛してくれる女に寄りかかれない真面目さ。やっとのことで掴んだ愛に裏切られる絶望。そこから這い上がろうとする逞しさ。常に孤独と共にある。フェニックスは決して記号化できるような感情表現はしない。

 役者の力量はラヴシーンを見れば分かるとは良く言われることで、なるほどフェニックスもその例に漏れない。包み込むようなショウとのラヴシーンも衝動的なパルトロウとのラヴシーンも、それぞれに熱っぽい。全身全霊で愛している空気が滲み出る。吐息に誠実さが宿る。しかも、そこに余計な装飾を剥ぎ取ったグレイの演出が被さる。グッと見入る。グレイがフェニックスを連続起用するのも無理はない。





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