リミットレス

リミットレス “Limitless”

監督:ニール・バーガー

出演:ブラッドリー・クーパー、ロバート・デ・ニーロ、アビー・コーニッシュ、
   アンドリュー・ハワード、アンナ・フリエル、ジョニー・ホイットワース、
   トマル・アラナ、ロバート・ジョン・バーク、ダーレン・ゴールドスタイン

評価:★★★




 人は普段、脳が持つ能力の20%しか使ってないのだという。『リミットレス』に出てくる「NZT48」は、それを100%にまで引き出す薬だ。飲めば、頭が冴え渡る。思いがけないアイデアが浮かぶ。物事の先の先までが読めてくる。それまでとは違う自分が出来上がる。これと違法薬物との共通点を見つけて、映画をその警鐘とみなすのは極めて退屈だ。いや、作り手すらもそう見ているフシがあるのだけれど、これはやっぱり「可能性」にまつわる寓話と見た方が楽しい。主人公の閃きは、潜在能力を100%活用しているに過ぎないのだから。

 いちばんの観所が、ニール・バーガー監督があの手この手で仕掛けてくる覚醒場面の演出にあることは疑いようがないところ。主人公が初めて薬を飲んだ際、内臓に取り込まれていく過程を見せるのはありきたりだけれど、その後の大半は騙し絵でも見せられているような幻惑性が感じられる。

 覚醒場面は、視覚効果を多用すればいくらでも凝ることができる題材。ところがバーガーはそれに頼らない。正確に言うなら、大変節度のある視覚効果使用に留めている。画面に文字が踊る。主人公が画面に何人も現れる。記憶のブルース・リーが呼び出される。早回しやスローモーションが使われる。言い換えるなら、極めてオーソドックスな魅せ方が採用されている。それまで青白かった画面が、覚醒すると突然黄色を基調にした色合いに変化するというのも、あぁ、なんと古典的なのだろう。しかし、この慎ましさがギリギリの現実味を添える効果を上げている。言うまでもなく、「覚醒」も分かりやすく伝わる。

 「NZT48」の設定が効いている。主人公から引き出されるのは観察力、そして情報へのアクセス能力。見えなかったものが見えてくる。自分の力を最大限引き出す快感を、映画の快感へと変換させることに成功している。ふとダニエル・キイスの「アルジャーノンに花束を」を思い出す。あちらはいたって真面目な寓話だったけれど、こちらは類似性を持つ設定を借りながら、「映画の快感」に賭けている。好もしいことだ。

 主人公がこの「NZT48」との出合いを通して教訓を得ようとしない、学ぼうとしない、良い人間になろうとしないのも正解だろう。彼は「NZT48」の副作用(これはもっと捻りを加えるべきだった)に悩まされ、予期せぬ者たちから命を狙われることになる。それにも関わらず結局、「NZT48」からの脱却を試みようとはしない。彼は欲望に支配された人間だ。弱く、浅ましい。ブラッドリー・クーパーはこの男に命を与えた。愚かでも見入ってしまう息遣いを与えた。

 惜しむらくは主人公の興味が、金儲けや名声欲の方向にしか向かわないところだ。「社会的成功こそ最高の幸せ」という構図は面白くない。頭が冴え渡るのだから、それ以外の価値観に目覚める柔軟性を見せることはできなかったか。主人公を操ろうとする投資家(ロバート・デ・ニーロが小遣い稼ぎ的演技)の思惑も含め、このあたりは意外性に乏しい。

 それから、主人公がちっとも「NZT48」を増やそうとしないのが腑に落ちない。真っ先に考えることだと思うのだけれど…。大物になる者とそうでない者の違いか…。





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