カンパニー・メン

カンパニー・メン “The Company Men”

監督:ジョン・ウェルズ

出演:ベン・アフレック、トミー・リー・ジョーンズ、クリス・クーパー、
   ケヴィン・コスナー、マリア・ベロ、ローズマリー・デウィット、
   クレイグ・T・ネルソン、ウィリアム・ヒル

評価:★★




 デヴィッド・マメットの戯曲をベースにした1992年映画「摩天楼を夢みて」は、職を失うまいと死に物狂いで結果を残そうとする下っ端セールスマンたちが描かれていた。あれから20年近くが経過、ひとつの銀行の経営破綻を発端にした金融危機は、そういった最後の一踏ん張りすら許さず、容赦なくクビを突きつける。これから時代はどこへ向かってしまうのだろう。アメリカに限らない、世界中の嘆きだ。

 作られるべくして作られた『カンパニー・メン』では、3人の男たちが描かれる。働き盛りの中年エリート。還暦間近のヴェテラン。会社の躍進に重要な役割を担ってきた古参。会社の経営建て直しのためにいずれも厳しい立場に追い込まれる。

 ベン・アフレックが演じるのは、その中でも中心人物である37歳のエリートだ。クビを告げられてからの彼の反応が切ない。順風満帆の人生を信じて買った豪邸や高級車、贅沢な余暇。分かりやすい幸せに包まれた毎日。それを手放すべきときなのに、それができない。男にとってそれらは成功の証明であり、同時に生きてきた証だ。なくなってしまうことはプライドの崩壊以上の意味を持つ。アフレックは必死の執着を見せる。しかし、見えてくるのは光ではなく、非情な現実。ここに企業の冷酷な体質が浮かび上がる。新しく社員を募集する側も温かくはない。従業員は金を生むための道具でしかなく、その解雇には必要以上の情は入らない。明日は我が身の痛みが胸に迫る。

 全くもってけしからぬ現実。しかし、この資本主義の闇を家族と対比させるのは卑怯ではないか。アフレックは何日、何週間、何カ月も就職活動を続ける。しかし、手応えを感じることはなく、日に日に焦りが募っていく。作り手はそういう苦境下における家族の価値観を見直していくのだけれど、結局のところ、それは会社から離れたところにある安らぎに過ぎない。男たちが戦うのは、家庭ではなく職場なのだ。もちろん家族がいる有難味も忘れてはいけない。ただ、それに寄りかかることで、目の前にある現実を柔らかく見せるのは安易と言うもの。「家族がいる幸せ」ではなく「家族しかいない絶望」を切り取ることこそ、ここでは意味のあることだったろう。ご丁寧なことに、家族の支えのある者とない者の対比もなされる。焦点がズレている。

 もうひとつ気掛かりなのは、ブルーカラーとホワイトカラーの対比だ。どうもブルーカラーに対して「給料は安くても汗水流して充実した毎日を送ることのできる尊い仕事」という見方がちらつく。終幕にその枠に留まらない流れがあるものの、家族同様、ブルーカラーの温か味がやけに強調されている感は否めない。ブルーカラーの厳しい点を、重労働以外のところで見せることはできなかったか。

 生温くウェルメイドの方向に持ち込んでしまった作品。それとは切り離して考えると、トミー・リー・ジョーンズやクリス・クーパーの演技は言うまでもなく味わい深い。アフレックが彼らと一緒の画面に入ると、途端にその単調さが際立つ。ただ、そのアフレックも決して使えないわけではない。大きな背中に宿る哀愁はなかなかの説得力を湛えている。ちょっとだけ丸みを帯びた背中が切ない。「ハリウッドランド」(06年)で見せた堕ちていく哀しみに通じる哀愁だ。





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