スリーデイズ

スリーデイズ “The Next Three Days”

監督:ポール・ハギス

出演:ラッセル・クロウ、エリザベス・バンクス、リーアム・ニーソン、
   オリヴィア・ワイルド、ブライアン・デネヒー、レニー・ジェームズ、
   タイ・シンプキンス、ヘレン・ケアリー

評価:★★★




 ベースとなっているフランス映画「すべて彼女のために」(08年)と大筋は同じだ。突然身に覚えのない罪で逮捕され、終いには終身刑を言い渡されてしまった妻を、脱獄させてでも助け出そうとする夫の物語。なるほど「クラッシュ」(04年)「告発のとき」(07年)で法制度の問題点や個人の倫理観に揺さぶりをかけたハギスが目をつけてもおかしくない内容だと思う。ただ、リメイクの話を耳にしたときは、少々不思議な気がしたのも事実だ。オリジナルはサスペンスこそふんだんに盛り込まれ、様々な問題提起もなされているとは言え、全体の印象は愛の物語だったからだ。

 ハギスはだから、オリジナルのような「ラヴストーリー」仕立てにするつもりは、最初からなかったのかもしれない。細部を自分好みに少しずつ変えているのは明白で、したがってオリジナルとは随分感触が異なる。ただ、そうして固められた作品の外観が「アクションスリラー」というのは狙い通りだったのかどうか。描きたかっただろうテーマよりも娯楽寄りの快楽の匂いの方が濃い。力のあるハギスだから、そこいらのハリウッド製アクションスリラーとは一線を画すものであることは間違いないけれど…。

 いちばんの違いは構成バランスにある。オリジナルは夫の底知れない愛の暴走に焦点を当てていた。突然愛する人が逮捕されてしまう衝撃。覆らない判決への絶望。決意を固めてからの入念な準備。いよいよ脱獄劇に入るまでの心理模様にコクがあったことを思い出す。ハギスはそのあたりを巧みな編集術でサラリと見せてしまう。たっぷり時間はかけても、印象は淡白。そしてその分、クライマックスの「プリズン・ブレイク」的脱獄アクションへの比重を大きく取る。調べて見ると、上映時間はオリジナルの96分より37分長い133分だ。長くなったのはアクション描写に他ならない。なにしろ脱獄が始まってから終わりまで1時間近く用意されている。

 …とは言え、ハギスのアクション演出は悪くない。舞台としてピッツバーグが選ばれているのがポイントだ。この地での脱獄は難しい。橋が多くて封鎖が容易いせいだ。ちょっとの計画の遅れが命取りになる。タイムリミットを自ら設けて計画を進めていく夫の姿に手に汗握る。役者たちの身体が良く動く。ミスリードが手際良い。警察もそれほどバカには見えない。地形を俯瞰で捉えたショットを取り入れるのも気が効いている。ただ、もう二捻りくらい地形の特色を盛り込んで欲しかったところ。

 「アクションスリラー」色が強いのは、演じる役者のイメージによるところも大きい。夫をラッセル・クロウ、妻をエリザベス・バンクスが演じていて、どちらも一般人とはかけ離れたタフさを感じさせる。いや、クロウなど随分抑えた上手さを見せているのだけど、それでも基本はホレ、逞しい「ジャガイモ」顔だから。バンクスにしても刑務所ですぐさま女王的存在になれそうな顔立ちだ。もちろん彼らのこの特徴はスター性に繋がる。輝くことも大味になることも可能。ここではギリギリのところで大味の沼にはハマらなかったと思う。スター映画として見ていられる。

 とりわけクロウの演技には見入る部分が多い。寡黙な役柄ゆえ、目の芝居に引き込まれる。愛する妻を見つめる優しい目も、妻に何もしてやれない無念の目も、妻を心から信じている決意の目も…あぁ、なんとニュアンス豊か。ジャガイモはジャガイモでも「できるジャガイモ」だ。声も心地良く響く。クロウと父親役のブライアン・デネヒーによるある一場面は、オリジナルに負けないくらいに印象に残る。





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