サンクタム

サンクタム “Sanctum”

監督:アリスター・グリアソン

出演:リチャード・ロクスバーグ、ヨアン・グリフィズ、
   リス・ウェイクフィールド、アリス・パーキンソン、ダン・ワイリー、
   クリストファー・ベイカー、ジョン・ガーヴィン

評価:★★




 どうやらジェームズ・キャメロンはよっぽど水の中が好きらしい。「アビス」(89年)や「タイタニック」(97年)はもちろん、ドキュメンタリーや短編でも海の世界にカメラを送り込んでいる。パプア・ニューギニアの密林にある洞窟に閉じ込められた男女のサヴァイヴァル劇は、水へのこだわりが相当に強いキャメロンが飛びつくのも当然の題材かもしれない。ただし、監督はアリスター・グリアソンという聞き慣れない人が担当、キャメロンはエグゼクティヴ・プロデュースに回っている。どうして自分で監督しなかったのか、ふとある考えが過ぎる。ひょっとしてキャメロンは、水中シーンがふんだんに出てくるこの低予算映画で、最新技術を試してみたかっただけなのではないか。今の技術でどこまで水中を鮮やかに切り取ることができるだろう。まずは監督ではなく、もう一歩引いたところから眺めることにしようじゃないか。深読みでしかないか。

 『サンクタム』では「アバター」(09年)のために開発されたカメラや水中用の3Dカメラが使用されているらしい。キャメロンが興味を持ったのは、当然水中の3D撮影だろう。青白い光の差し込む洞窟には神秘的な美しさがあり、それが3Dで浮かび上がったらそれはそれは鮮やかに違いない。キャメロンはそれを信じたのではないか。

 実際、静の場面では時折ハッとするほど美しく感じられる場面がある。水特有の揺らめきに光が当てられることで美は完成される。自分がその世界に吸い込まれてしまうのではないかという不安感も立ち上がる。バカなクリエイターならここに未知のバケモノを放り込むところだけれど、さすがにそんな愚行はなされることなく、水そのものの魅力で勝負している。有難い。

 有難いけれどしかし、勝負に勝ったとは言い難い。「アバター」のような奥行きもさることながら、同時に立体性も重視されているようで、その欲張り方が裏目に出ている箇所が目立っている。洞窟ならではの凹凸、突然の突起物が次々立体性を帯びるのはもちろんのこと、狭い空間ではほんのちょっとの高低差でさえも3Dに変換。しかも、天から差し込む光までもが3Dになっている。これがとても煩い。浮かび上がり方が過剰で、しっかりと確認できない箇所もあるくらい。限定された空間ながら縦に横に忙しく動き回る人間たちを眺める分にはアクションの醍醐味がたっぷり感じられるはずなのに、この3Dのせいでちっとも集中できない。少なくないクローズアップが3D向きではないこともはっきり分かる。

 アクションが映えないのは、物語の単純さよりも、細部の描き込みが中途半端ゆえだろう。現代最高の冒険家がリーダーにいるというのに、洞窟の奥深くに入っていくのに使う道具がまるで説明されない。環境の変化に対応できない人間の身体を襲う異常も簡単なセリフで済まされる。洞窟内で彼らが今どのような状況に置かれているのかも分かったようなそうでないような適当なもの。サヴァイヴァル術が既視感を蓄積させていくだけなのもどうか。要するに説明不足が目立ち、それゆえどっぷり映像に浸かれない。

 それからリチャード・ロクスバーグ演じる冒険家の非情さが度々指摘されるのが気になった。と言うのも、素人目ではあるものの、彼の言い分にはちゃんと筋が通っていて、周りの者たちの思考こそ甘ったるいとしか、最初から映らないのだ。映像で勝負するにしても、最低限これぐらいは適切な処理が欲しかったところだ。





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