陰謀の代償 N.Y.コンフィデンシャル

陰謀の代償 N.Y.コンフィデンシャル “The Son of No One”

監督:ディト・モンティエル

出演:チャニング・テイタム、アル・パチーノ、ケイティ・ホームズ、
   ジュリエット・ビノシュ、レイ・リオッタ、トレイシー・モーガン

評価:★★




 アメリカの公営住宅では殺人事件が起こる。…と言うのは言い過ぎだろうけれど、少なくとも映画では平和で愉快な場所であったことはない。苦しい生活を強いられている者たちが、必死にどん底から這い上がろうとしている光景が、強烈に目に焼きつく。『陰謀の代償 N.Y.コンフィデンシャル』もそんな公営住宅出身の男の物語だ。

 上から見るとパズルのピースような形をしたクイーンズの公営住宅で育った主人公は、今はスタテンアイランドに住んでいる。ただし、遂になった警官としての配属先は、家から2時間もかかるクイーンズ署だ。これは物語を象徴している。ようやく忌まわしき公営住宅から抜け出し、結婚し、子どもも生まれ、幸せを掴もうとしているのに、けっしてクイーンズからは離れられない。そもそもスタテンアイランドだって夢の場所なんかではないというのに。逃れられない運命の皮肉が浮かび上がる。誰が主人公を追い詰めているのかという謎で引っ張りながら、突きつけられるのは過酷な現実だ。

 ディト・モンティエル監督は主人公の過去と現在を交錯させながら描き、主人公に何が起こっているのかを織り上げていくのだけど、どうも語りのペースが気持ち良くない。主人公を演じるチャニング・テイタム(太り過ぎ)が脅迫文的手紙の送り主を突き止めるサスペンスを軸に置きながら、それが加速しようとする度に回想シーンを入れる愚を犯す。子ども時代に犯したふたつの罪。決して意図的なものではなかったにせよ、それがテイタムを苦しめる。その源を必要以上に丁寧に描くことで、かえって物語が痙攣する。見え過ぎるものがサスペンス性を薄めていく。

 モンティエルが回想場面にこだわったのは、ひょっとするとアル・パチーノが鍵を握る老刑事を演じたことが大きいのではないか。20世紀を代表する名優であるパチーノを思いがけず配役できてしまい、それゆえ役が予定よりも膨らんで、実は一件で十分な殺人事件が二件になり、省略するべきところをそうできず、結果回想場面が増えることになったのではないか。パチーノには「男は生きるしかないんだ。クソみたいな問題を抱えてな」という主人公の生き方を表した言葉まで言わせている。不自然な過去、そしてパチーノへの大きな比重が目立つ。もちろん全くの想像でしかないものの…。

 細部も活かされていない。娘の病気、新聞記者の動かし方、相棒の暴走、上司の圧力…何より子ども時代の秘密を共有した親友の変貌が物語に絡まりを見せない。結局常識的な言動しかできない主人公の煮え切らない話に着地してしまうのはそのせいだ。

 ところで…どういうわけだか主人公は全く思いつかないのだけれど、手紙の送り主の正体は早々に閃く。事件を知っている人物でしかないのだから、ピックアップすればそれで終わりだ。いくら送り主の正体を明かすことが目的の映画ではないにしても、あまりにも安っぽい真相ではないか。





blogram投票ボタン

ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ