ハンナ

ハンナ “Hanna”

監督:ジョー・ライト

出演:シアーシャ・ローナン、ケイト・ブランシェット、エリック・バナ、
   トム・ホランダー、オリヴィア・ウィリアムス、ジェイソン・フレミング、
   パリス・アロースミス、ジョン・マクミラン、ティム・ベックマン

評価:★★★




 ひょっとすると多くの人は、少女が銃を握って戦うという共通点からリュック・ベッソン監督の「レオン」(94年)を連想するのかもしれない。けれども『ハンナ』は、ハードなスリラーの皮を被った少女メルヘンなんかとは、全く異なる感触を湛えた映画だ。少女が主人公に置かれても甘ったるさは完全に排除され、その過酷な運命がじりじりと生々しく浮かび上がってくる。物語の組み立て、構造に工夫があるのだ。

 最も舌に残るのは、物語の外見から細かな細部まで、寓話性と現実性が同居しているところだろう。フィンランドの奥地にある銀世界で少女ハンナが殺人マシーンとして育てられるという設定は随分御伽噺めいているというのに、場面が移り、そこにCIAによる一流のテクノロジーが絡み始めることで現実性が急激にせり上がってくる。言い換えるなら、少女はどこまでも御伽噺のヒロインなのに、彼女を追いかける物語に肉付けされていく要素は、最先端の技術に彩られている。寓話性と現実性、どちらも己を主張して譲らない。それが独特の空気を生み出している。

 音楽にも同じことが言える。英国のテクノユニット、ケミカル・ブラザーズが起用されているのが面白い。フィンランドでの静けさから一転、スリランカ、スペイン、ドイツ…舞台が移動すると民族色の強い音楽が流れるのだけれど、しかしアクション場面になると、途端にケミカルのエッジの効いた音が炸裂する。その対照性に惚れ惚れ。

 ケミカルの音楽が流れるアクション場面が素晴らしくカッコイイ。第一に捕らえられたCIAの一室からハンナが脱出を謀る場面。第二にドイツのバスターミナルでハンナの父親がCIAと格闘する場面。前者は下手な監督なら過剰と取られかねない編集の巧みさが映え、後者はジョー・ライト監督作品ではお馴染みの長回しが素晴らしいリズムで紡がれる。大胆な画面転換、人物の出し入れの上手さに唸る。

 そう、ライトの技はいよいよ冴え渡っている。カメラの動かし方も、説明過多になり過ぎない慎ましさも、役者を信頼した画面作りも素晴らしい。大体オープニング場面だけでもライトの手際の良さが際立っている。真っ白な雪景色の中で鹿を狙う少女がいる。仕留めるのに使用するのは弓矢だ。木々の間をすり抜けて、弓矢が鹿に突き刺さる。鹿は咄嗟に逃げ出すものの、しかし遂に動けなくなり横たわる。鹿の充血した目に追いかけてきた少女が映る。そして言い放つ。「心臓を外しちゃった」。ほんの数分の場面で、ライトは少女の輪郭を鮮明にしてしまうのだ。しかもこの場面は後々に大きな意味を持ってくる。

 ハンナを演じるシアーシャ・ローナン、そして追いかけるCIAエージェントのケイト・ブランシェット。ふたりの存在に何か強烈に引き寄せ合うものを感じる。容姿にも通じるものがあるし、何より全く置かれている立場が違う彼女たちの中で共鳴し合うものがちらつく。一体何なのかははっきりとは説明されないのだけれど、どうやら母と娘のそれに通じるもののようだ。ハンナの出生の秘密に絡めた謎がコクを深いものにしている。





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