たった一人のあなたのために

たった一人のあなたのために “My One and Only”

監督:リチャード・ロンクレイン

出演:レニー・ゼルウィガー、ローガン・ラーマン、ケヴィン・ベーコン、
   エリック・マコーマック、クリス・ノース、ニック・スタール、
   スティーヴン・ウェバー、マーク・レンドール

評価:★★★




 1953年、夫の浮気を目撃した妻が家を飛び出し、ふたりの息子と共に新しい幸せを見つけようとする話。なんとなくダイアン・レインによりピッタリの物語のような気もするけれど、しかしながらレニー・ゼルウィガー、大健闘である。ヒロインの細部の描き込みが、最近のゼルウィガーのパーソナリティにぴったり合致しているのだ。このところ女優としての計算高さが演技から透けてしまうことの多かったゼルウィガーが、ここではそれを逆手にとって役柄に真実味を与えている。

 幸せを目指すと言っても、簡単に言ってしまうと「新しい男を見つける」ということだ。結婚こそ女の幸せという価値観が幅を利かせていた時代、自分で働いたこともないヒロインは、夫の貸し金庫から頂戴した金を元手に男探しの旅に出る。つまり最初から頼れる誰かをあてにしている女だ。ここで活きてくるのがゼルウィガーの、一向に垢抜けない顔立ちの向こう側に見える、したたかさだ。素朴さや純情を全面にアピールした立ち振る舞いが、全てコントロールされているのが今のゼルウィガー。「ザ・エージェント」(96年)で注目された頃は上手く隠されていたそれが露になり、それでも騙される男たちを巧みに手玉に取る。言わば、女が最も恐れる女の道を突っ走っている。ここでのゼルウィガーはそれをむしろ利用して、ヒロインの一見浅ましく見える言動の中に潜む逞しさを掬い上げている。

 ゼルウィガーの武器をもってしても、しかしそれでもいきなりは幸せには手に入らない。偶然だろうけれど、ここでもゼルウィガーのプライヴェートイメージとリンク、ヒロインには男運がないのだ。出会うのは金目当てだったり暴力男だったり、ただの助平だったり若い女好きだったり、はたまた結婚詐欺師だったり強盗だったり…。もはやそういう星の下に生まれたとしか思えない男運のなさに笑う。そしてそれに傷つき、そこから這い上がっていくところにもまた、ゼルウィガーの妙な強さが活かされている。

 ニューヨーク、ボストン、ピッツバーグ、セントルイス、ロサンゼルス…気がつけばアメリカを横断している女はしかし、別に男との仲だけに全力を注いでいたわけではない。ふたりの息子、とりわけローガン・ラーマン演じる次男との距離感に、無意識にデリケートな気遣いを見せている。父を愛するラーマンは母の言動をいつも冷めた目で見ている。ほとんどクソボーズ的な生意気さながら、少年らしさを失っていないのがイイ。同世代の女の子との交流にドギマギしたり、父の本性を垣間見てショックを受けたり、自分の可能性に夢を見たり、成長期の少年らしく、精神的にどんどん力強さを増していく。成長と共に、しかし母との関係はギクシャクする。このあたりが非常に丁寧に描写されているため、物語の軽薄さが随分抑えられている。

 1950年代が反映されたディテールも見所になっている。妙にフェミニンな長男の刺繍、ヒロインが好きな格言、黒人差別や戦争の影。美術や装置、衣装も大変カラフルで、眺めているだけで気分が盛り上がる。冒頭にキャデラックをポーンと買ってしまうのも景気が良い。唯一無念なのは、ゼルウィガーに当時の衣装が似合わないこと。結局「コールド マウンテン」(03年)のような衣装が最も似合うのだろう。

 ニューヨークから始まった旅はロサンゼルスが終着点となる。東から西へ。ニューヨークには戻らないのに、まるでアメリカを一周したような印象が色濃い。ヒロインや息子たちが幸せの意味を知った証拠だと思う。





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