精神科医ヘンリー・カーターの憂鬱

精神科医ヘンリー・カーターの憂鬱 “Shrink”

監督:ジョナス・ペイト

出演:ケヴィン・スペイシー、ジョー・ヌネズ、マーク・ウェバー、
   ケケ・パルマー、サフロン・バローズ、ジャック・ヒューストン、
   ダラス・ロバーツ、ロビン・ウィリアムス

評価:★




 ケヴィン・スペイシーが演じるヘンリー・カーターは精神科医だ。ただし、精神科医は精神科医でも、ハリウッドの有名人、最近の呼び名で言うならセレブリティを相手にしているところがミソ。傲慢なエージェントに売れない脚本家、歳をとり始めた女優に何やらいわくあり気なアフリカ系少女。ほとんど本人役と言っても良い役柄で出てくるロビン・ウィリアムスも診ている。ハリウッドを舞台にした映画ということで、なんとなく精神科医版「ザ・プレイヤー」(91年)的に仕上がるのではないかとニンマリする。これが全くの期待ハズレに終わってしまうのは、作り手が何を撮りたいのかを自分自身でも分かっていないからではないか。

 『精神科医ヘンリー・カーターの憂鬱』という邦題通り、主人公は病んでいる。妻を自殺で亡くして以来、患者を診ながら、自分こそが自堕落な生活に堕ちている。アルコールに溺れ、ニコチンを手放せず、ドラッグに塗れている。スペイシーは芸達者だから、カーターのどん詰まりの心模様は明確に伝わる。

 ただし、これが全然楽しくない。俺の傍にいるのは患者だけなんだと嘆いている様が延々映し出される。確かに気の毒な出来事を経験した男だけれど、妻を亡くす夫は別に彼だけではない。患者を導きながら自分を導くことができないという、ほとんど出オチ的な構図を律儀に守り、そこからの脱出を図ろうとしないのだ。気にかけてくれる者の言葉に耳を傾けることもせず、酒とタバコとマリファナでトリップ。終いにはテレビのトークショウで醜態を晒す。次第に自分が嫌いという想いが自分が不憫という自己憐憫の方向に傾いていく。ほとんどソフィア・コッポラ的。カーターの憂鬱が観客の憂鬱に変換される。

 しかも、セレブリティ相手の精神科医という設定は活かされない。患者たちはそれぞれ悩みを抱えているけれど、結局のところ言いたいことは同じだ。「俺は何者なんだ。私はどこに向かえばいいの。華やかな世界に生きているけれど、心に抱えているのは庶民と変わらない。寂しいんだ。孤独なの。同じように辛いんだー!」という叫び。なんともまあ、チープなこと。寂しがり屋の人間たちの観察日記でも眺めている気分になる。わざわざセレブリティ相手の精神科医という設定にする必要はない。

 作為的なことに、カーターの患者たちは終幕に向かって、ある繋がりを見出していく。これがまた、ちょっと良い話風にまとめようとしていることが透けて見えるのがイライラを誘う。皮肉にも辛辣にもなれない目線が、突然彼らを優しく見つめ始める。それまではほとんど無関心を装っているかのようだったのに。彼らは「それでも私たちはここに生きている」という結論に辿り着く。どうでも良い。

 終盤になると、どういうわけだか彼らは、それぞれが一本の映画の関係者となっている。頓珍漢も甚だしい。どこにも焦点が定まらないままのクライマックスが、憂鬱なため息をもらす。





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