インシディアス

インシディアス “Insidious”

監督:ジェームズ・ワン

出演:パトリック・ウィルソン、ローズ・バーン、タイ・シンプキンス、
   リン・シェイ、バーバラ・ハーシー、アンガス・サンプソン、
   アンドリュー・ワスター、リー・ワネル

評価:★★★★




 正しく古めかしくて、鋭く新しい恐怖世界に果敢に挑んだホラー、それが『インシディアス』だ。保守的でありながら、どこか進歩的に感じられる。当然恐怖の質が、その辺に転がっているホラーとは全く違う。恥ずかしながら、何度も声が漏れそうになった。そして何度か本当に飛び上がってしまった。

 物語は静かに始まる。少々曲線が多めの古風な邸宅に、ある家族が越してくる。彼らの周囲では奇怪な出来事が起こり、遂には幼い長男が昏睡状態になる。もちろん派手な演出はされない。家の軋み。ドアを開けるときの音。足音。空気の流れ。生活の中に溢れる音が心理的圧迫感に変貌する。画面のくすんだ色合い、現実感を失わない登場人物、時に覗き込むように時に後をつけるように柔軟に動くカメラ。突然のショッキングな映像や音楽が使われた魅せ方も出てくるけれど、大半は慎ましく大人っぽいそれが採られている。ただ、これだけだと趣味の良いホラーだけで終わっていたかもしれない。

 そうなのだ。この映画、家族が家に恐れをなし、別の家に再び越してから恐怖が捻られていくのだ。前半は日常に潜む恐怖を膨らませたような印象だったのが、大胆にも異空間へと突き進んでいく。キーワードは幽体離脱だ。ここで重要なのは、前半で何気なく描かれてきた伏線だ。気にも留めなかった日常風景が次第に熱を帯び始める。そしてそれが異空間の存在に真実味を与えることになる。積み重ねられてきた、小さな恐怖もそれを強固なものにする。

 異空間の創り込みが、ギリギリのところで嘘臭く浮き上がらなかった。冷静になってみると、遊園地のお化け屋敷的な雰囲気だし、人間ではないヤツらのメイクは「オレたちひょうきん族」のアミダばばあ的なそれなのに、しっかり怖い(いや、でもやっぱりちょっとマヌケ。でもマイナスにはならない)。意表の突き方、嘘のつき方に芸があるからだ。霊能者が出てくる件はもろ「エクソシスト」(73年)を連想させるけれど、決してそれに呑まれてはいない。

 そして、いつしか恐怖を追走する形で、親子の不思議、親子の愛がせり上がってくる。異空間で親子が非現実に立ち向かう。その懸命な姿についホロッとくる。

 配役が素晴らしい。序盤は母親役のローズ・バーンが泣き顔を活かした好演。後半になると、バーンに較べるとやや陰の薄かったパトリック・ウィルソンが全身から恐怖と愛を搾り出す。子役や脇を固めるキャストも出過ぎず霞まずの立ち位置を離れない。

 お化け屋敷ホラーが異空間ホラーに変態を遂げる。着地点が見えない。暗闇が怖くなる。





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