未来を生きる君たちへ

未来を生きる君たちへ “Hævnen”

監督:スザンネ・ビア

出演:ミカエル・パーシュブラント、トリーヌ・ディルホム、ウルリク・トムセン、
   ウィリアム・ヨンク・ユエルス・ニルセン、マルクス・リゴード、
   トーケ・ラース・ビャーケ、ビアテ・ノイマン、キム・ボドゥニア

評価:★★




 デンマーク出身のスザンネ・ビアの映画は、毎度のことながら、とても分かりやすい。複雑で深刻なテーマが扱われていても、それを情報量豊富で単純な構図の中に落とし込むからだ。言わんとしていることが手にとるように伝わる。…なんて書くと、まるで褒めているみたいだけれど、むしろ逆の思いが強い。説明過多、或いは作為性から生まれる、柔軟性に欠けた息苦しさを常に感じることになる。

 『未来を生きる君たちへ』では「憎しみの連鎖」が映画という大きな枠の中にカチッとハマっている。アフリカで医師として働く中年男と、デンマークの小さな町でその帰りを待ち焦がれる息子、そして母を亡くしたばかりのその友人を中心に、それぞれが直面する危うさを丁寧に描写していく。命を粗末に扱う“ビッグマン”と呼ばれる荒くれ者。学校内で避けては通れないイジメっ子。不当な暴力を正当化する自動車整備士。憎しみの渦が次々巻き起こり、そしていずれもがテーマに合致していく。

 言い換えるなら、ここには余白がない。簡単には答えの出ない答えを取り上げ、しかし当然暴力行為は否定され、それゆえ落ち着くべきところに落ち着いていく。例えばこんなセリフ。「やり返したらキリがないだろう。戦争と同じだ」。大変マトモな答えで、同時に面白くない答えだ。そこから広がっていくことがない。そこで終わってしまう。

 だから、喪失感がバケモノ的に成長していく恐ろしさだとか、酷く真面目で正論といえる思考が突如理性を失う瞬間だとかを捉える、テーマの芯からは少しだけズレた場面の方が心に残る。尤も、これもビアの創り上げた構図のパーツであり、結局冷静さを誘われるのだけれど。

 ビア映画の登場人物はハードな現実に直面している。そしてハードな選択を強いられる。そのため感情の起伏は激しくなる。いや、激しくならざるを得なくなる。ところがそうした心の機微もまた、図式化された構図の中で、分かりやすく説明される。ほとんど記号的。複雑だけれど記号的。おかしな言い方ではあるものの、仕方がない。

 終幕の創り込まれたメロドラマ的展開は、いつも通りのビア映画だ。テーマを一層明確にしたいがために物語が痙攣を起こす。

 ただ、それでも「アフター・ウェディング」(06年)や「悲しみが乾くまで」(07年)よりは技巧的な魅せ方には走っていなくてホッとした。おかげでささやかな希望を優しく受け入れることができる。構図がキマり過ぎていたために、そうする必要性がなかったと言ってしまうのは意地が悪いか。





blogram投票ボタン

ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ