シャンハイ

シャンハイ “Shanghai”

監督:ミカエル・ハフストローム

出演:ジョン・キューザック、コン・リー、渡辺謙、チョウ・ユンファ、
   菊地凛子、フランカ・ポテンテ、ジェフリー・ディーン・モーガン、
   ベネディクト・ウォン、ヒュー・ボナヴィル、デヴィッド・モース

評価:★★




 太平洋戦争開戦前夜のシャンハイが、中国のみならず、日本やヨーロッパ各国、そしてアメリカが利権を求めて入り乱れ、それゆえ「魔都」と呼ばれていたことは大変有名な話。なるほど映画の舞台としてはもってこい。ならばそこにどんな題材を持ち込めば良いだろうと考える。色々選択肢があったであろう中から選ばれたのは、スパイの絡んだ陰謀劇だ。なのに中盤以降、メロドラマの方向に傾いてしまった感が強い。男と女が障害を乗り越えて求め合い、バカバカしく坂を転げ落ちていく。

 脇のキャラクターも含め、映画界で名の知られた俳優たちが次々登場する。主役はジョン・キューザックということになるのだろうけれど、真の主役と言うべきはタイトルにもなっている『シャンハイ』、その街であることは疑いようがない。東洋のパリは中国が統治していない各国の租界が置かれ、混沌という言葉では表すことのできない匂いをまとっていた。妖しく、淫ら。猥雑で、艶やか。

 シャンハイのこの表情を切り取らないことにはお話にならないと思うのだけれど、ここで描かれるシャンハイは、人がごった返しているばかり。煩くはあっても色気は感じられず、ゴミゴミはしていても妖気がたち込めない。何か悪の香りが漂ってくるような、華やかな裏側で底の知れない悪が蠢いているような、不穏さが伝わってこない。いつ戦争に突入してもおかしくない状況下、これ以上ないドラマティックなシチュエーションが、単なる演技の場に終わっている。作り手の映像センスの問題だろうか。

 最も旨味のある役柄はヒロインだ。日本の権力者と繋がっている裏社会のボスを夫に持ち、しかし父を日本人に殺され憎悪を溜め込んでいて、いつしか抗日運動のレジスタンスとして暗躍する女。しかも彼女は思いがけず出会ったアメリカ人記者と強烈に惹かれ合う。他のどのキャラクターよりも複雑さを湛えている。これをコン・リーが演じてしまった不幸よ。いや、演技力には全く問題がない。大胆さと繊細さを同居させた女を的確に捉えている。ただこの役柄、誰もが認める絶世の美女が演じるタイプのそれだと思うのだ。それを平面アジア顔、下半身どっしりの彼女が演じてしまうのは拙い。化粧を濃くすると水商売の女に見えてしまうのも困りものだ。男たちの運命を狂わせていくファムファタールとして機能してない。

 実のところ、ここで描かれる事件はほとんど展開というものがない。アメリカ人スパイが殺害された事件の背景にある人間関係が明らかにはなっても、新しい物語が紡がれていくことがない。では主人公のキューザックは何をしているのかというと、誰もが表とは違う顔を持つ人々の目撃者でしかないのだ。事件を調べると言っても、本格的な捜査はなく、それどころかその過程で出会った女と恋に落ちてしまう。話が弛んでしまっても仕方がない。陰謀劇の平坦さは彼の描き込み不足によるところが大きいだろう。それにキューザックとコンのラヴストーリーもいかにも強引。「カサブランカ」(42年)でも意識しているのだろうか。なんと図々しい。

 クライマックスはいきなり香港映画のような銃撃戦になり、その後は「タイタニック」(97年)的逃避行に堕ちていく。キューザックとコンのケミストリーがふくよかであればまだ救われたかもしれないのに、結局最後までスパークしない。

 渡辺謙が堂々とした存在感だったのは数少ない見所のひとつだ。キューザックのような大男と並んでも引けをとらない佇まい。軍服を鮮やかに着こなし、射るような眼差しで画面を圧倒する。日本人としては辛い場面も少なくないけれど、渡辺の立ち振る舞いには誇らしい気分。もっとハリウッドで役柄に恵まれてもいい。





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