くたばれ!ユナイテッド サッカー万歳!

くたばれ!ユナイテッド サッカー万歳! “The Damned United”

監督:トム・フーパー

出演:マイケル・シーン、ティモシー・スポール、コルム・ミーニー、
   ジム・ブロードベント、スティーヴン・グレアム、ピーター・マクドナルド

評価:★★★★




 サッカーは語れるほどに詳しくないのでブライアン・クラフについても知らなかったのだけれど、どうやら彼は英国の誇りのように語られる人物で、選手として一流だったことはもちろん、監督としても歴史に残る偉業を残しているらしい。

 『くたばれ!ユナイテッド サッカー万歳!』で目新しいのはまず、選手時代ではなく監督に就任してからの彼を取り上げている点である。サッカーというスポーツは90分間動きっぱなしで、当然映画的なアクションも多くあるというのに、それには全く触れない。その代わりに監督クラフの采配がどんなものだったか、どんな信念で戦っていたのか、何が彼を名匠たらしめていったのかを浮かび上がらせていく。そうすることで生まれるドラマ的な興奮に賭けているのが勇敢で、かつ作り手の物語に対する自信が見える。

 ユニークなのは設定だけではない。おそらく掘り起こせばいくらでも出てくるだろうクラフの偉業に焦点が当てられないのも面白い。ダービー・カウンティ時代のどん底からのとんとん拍子の成功も描かれるものの、あくまでそれは過去の出来事としてフラッシュバックで語られる。軸となっているのは、鳴り物入りでリーズ・ユナイテッドの監督になりながら僅か44日間で解雇されてしまうという、挫折と言って良い時代の話なのだ。過去の言動を見ている限りでは、恐ろしく失敗するとは思えない。その彼の采配が全く振るわない。憎んでいたはずのリーズ・ユナイテッドに何故やってきたのかという謎と共に、どうして彼が失敗に至ったのかが、念入りに描かれていく。

 ポイントになるのは「野心」というものである。野心というのはバランスが大切で、全くないと退屈なものだけれど、「度を過ぎると全てを破壊する」ものである。目指していたのは目先の勝利だけではないはずなのに、正しく勝ちにこだわっていたはずなのに、いつしか野心だけが膨らんでいく、その愚かさを怖れることなく見つめている。チーム・ユナイテッドの全てを否定するところから入ったクラフの心の中にあった傲慢さに説得力がある。

 傲慢さというのは映像として見せられるとすんなりとは受け入れ難いものだけれど、それもまた人間味のひとつであると魅せ切ってしまったところが巧い。演じるマイケル・シーンがとにかく良いのだ。自信満々で乗り込んだものの、アッという間に全てを失ってしまう男の持つ浅はかさを、こんな風に近寄り過ぎることも突き放すこともなく表現できるとは…。だからこそピーター・テイラー=ティモシー・スポールとの終幕のハグシーンが胸を打つ。こんなに美しい男同士のハグはなかなかないだろう。

 1960年代から70年代にかけての時代色も楽しいし、何より英国におけるサッカーというスポーツの意味が感じられるのがイイ。脇を固める英国人キャストの的確な演技もピリリと効いている。ありふれたスポーツドラマになる危険があったところを、角度を変えて物事を見つめることで華麗に乗り切った、独創的な人間ドラマがここにある。





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