ツリー・オブ・ライフ

ツリー・オブ・ライフ “The Tree of Life”

監督:テレンス・マリック

出演:ブラッド・ピット、ジェシカ・チャステイン、ショーン・ペン、
   フィオナ・ショウ、ハンター・マクラッケン、ララミー・エップラー、
   タイ・シェリダン、アイリーン・ベダード、ウィル・ウォレス

評価:★★




 テレンス・マリックにはどこかの山で隠遁生活でも送ってそうなイメージがつきまとう。寡作の人ということもあるし、巷に出回っている宣材写真が白髭を蓄えたものぐらいしかないのも理由になるけれど、それよりも「天国の日々」(78年)以来20年ぶりに撮り上げた「シン・レッド・ライン」(98年)や続く「ニュー・ワールド」(04年)が精神世界的な方向に入り込んでいたことが大きい。扱っている題材は戦争やらアメリカ史やらスケールが大きい。にも関わらず、人間の内面の奥底にまで深く入り込んだ、精神世界の探究とでも言うべき側面が色濃かったのだ。そして『ツリー・オブ・ライフ』である。その決定版とでも言うべき、マリック節炸裂の仕上がり。どこか別の世界にぶっ飛んでいってしまったような突き抜け方にほとんど困惑する。

 1950年代テキサス、高圧的な父親と心優しい母親。そして3人の息子のいる家族の物語。どこにでもいそうなファミリーの記憶を辿ると書くと、いたって普通の家族ドラマを連想してしまう。ところが、マリックは家族を描きながら同時に人類を、もっと言うなら地球を描くという豪快技に挑んでいる。次男を亡くし哀しみにくれる両親、それを受け止められないままに成長した長男が映し出されていた直後、スクリーンに見えてくるのは宇宙誕生、地球が産声を上げ、生命が活動し始め、そしていつしか人間が営みを始めるという、なんともまあスケールの大きな時間の流れだ。そこだけ取り出したらBBCのドキュメンタリーじゃないかと間違えてしまうかもしれない。呆気にとられる。

 もちろんマリックだから映像が美しい。エマニュエル・ルベッキによる撮影と編集、そして音楽(クラシック音楽が効果的に使われる)が見事な調和を見せ、その流れに身を任せると大変心地良い映像体験が待っている。画面が生み出すリズムに中毒性があり、まるで自分が時間の海に浮遊しているかのような錯覚を覚える。

 そうして辿り着く先にあるのが主人公家族であり、いつの間にか父が体現する「世俗」と母が魅せる「神の恩寵」という二元性が、溶け合ったり反発し合ったりしながら浮かび上がってくる。詩的な映像美で知られるマリックだから気づき難いけれど、相当に強引な力技。しかし、これがもっともらしく見えてくるから、なんだかスゴイ。生と死。善と悪。親と子。肉体と魂。金と名声。寛容と非寛容。強さと弱さ。力。支配欲。残酷さ。キーワードが次々浮上しては消えていく。生命とは何かを問い掛けながら、そしてその起源を見つめながら、全てが移り変わる、この世の無常がそっと染み入る。強引なのに、染み入る。

 場面毎にそこに込められた意味を分析することが可能な作りだ。マリックのことだから、何気ないショットにも大きな意味があるのだろう。ただ、そうやって頭でっかちに観るのは賢明ではない気がする。思考を停止し、目の前に映し出されるものをただ感じる、或いは受け止める。そこのところに価値があるのだろう。

 ほとんど「とんでも映画」の領域に足を突っ込みながら、それでも一流映画の風情を湛えている。ただ、そうした作り手ののめり込み方にツイていけないとうっすら思ってしまったのも事実だ。精神世界の探求は度が過ぎると、独り善がりなそれに繋がっていく。織り上げられた人生の樹を眺めながら、どこか冷めている自分に気づく。なんだか貴重な映像経験をしたような、いやでも案外胸に残るものはないような、気持ち悪さが残る。良くできていることが分かっても、何かが喉に痞えている。映画に、マリックに選ばれなかった者の戯言か。





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