モールス

モールス “Let Me In”

監督:マット・リーヴス

出演:コディ・スミット=マクフィー、クロエ・グレース・モレッツ、
   リチャード・ジェンキンス、イライアス・コティーズ、
   カーラ・ブオノ、サーシャ・バレス、ディラン・ケニン

評価:★★★




 続編映画と同じくらいハリウッドで量産されているリメイク映画において、常々不思議で仕方がないのは、なんでまた傑作と呼ばれている作品を取り上げるのかということだ。オリジナルのストーリーの面白さに目をつけるのだから当然と言えば当然なのだけど、どうせなら「せっかくアイデアは良いのに脚本や演出が惜しい。あそこをこうやって改良したら面白くなるのに…」というもう一歩な作品を作り直す方がやり甲斐があるのに。映画はビジネスだ。安全牌を選んでしまうのを承知はしているつもりでも、うーん…。『モールス』なんて、つい最近製作されたばかりのスウェーデン映画の傑作「ぼくのエリ 200歳の少女」(08年)のリメイクだ。ホワイ?何かメリットはあるのか?

 しかもコレ、オリジナルに極めて忠実な作りになっている。アメリカに舞台を移しただけで、そこにリメイクならではの味が注ぎ込まれるわけではない。どうやら作り手はオリジナルの世界観の再現、これに賭けたようだ。クリエイティヴな現場でこれは、あんまり良いこととは思えない。

 とは言え、つまらないかと言うと、そんなことはない。 孤独に生きるヴァンパイアの少女と彼女との出会いにより自我を開放させていく少年の物語は結局面白いし、ヴァンパイアの残酷さは真に迫っているし、少年が直面する暴力は大変生々しく描かれている。少年少女が主人公の映画としては異例の冷徹な眼差し。グッと見入る。ただ、やっぱり違う。根っこのところで何かが違う。妙な違和感が常に付きまとう。

 いちばん大きいのは場所に対する違和感だ。オリジナルはスウェーデンのストックホルム郊外。今回はアメリカのニューメキシコ州の田舎町ロスアラモス。どちらも雪が舞う冬が舞台だけれど、身体の芯から冷えてくるような冷たさは、ロスアラモスにはない。吐いた息がそのまま凍ってしまいそうな冷気、それが少年少女を包み込んでこその物語。真っ赤な血が映える気温というのもあるのかもしれない。小さな命の悲鳴と空気の冷たさが共鳴することがいかに重要か。それならばそれこそ暑い町、或いは暑い時期を舞台に、ねっとりとした空気を絡めた作りにした方が、新しい面白さが浮かび上がったのではないか。

 それから少女を演じるクロエ・グレース・モレッツも適役とは言い難い。タヌキ顔という点以上に気になるのは、彼女が成長し過ぎているという点だ。「キック・アス」(10年)のときからグンと大きくなり、物語の中で非常に大きな意味を持つ「少女性」がほとんど消えてしまっている。「少女性」が消え終わる直前ではなく、消え始める直後の一瞬のキラメキを捉えられないことには、「性」という重要なテーマのひとつが輝かない。驚いたのは脚が既に「女」になっていたことで、生脚の見える立ち姿に少女の姿はどこにもない。アンバランスな危うさも感じられない。

 もし仮にオリジナルを観ないままに作品に触れていたらどう思っただろう。おそらく同じように違和感を感じたのではないか。全く同じにコピーしているようで、物語の本質と結びつく部分が決定的にズレている。良くできてはいても傑作に届かないもどかしさを覚えたはずだ。





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