愛の勝利を ムッソリーニを愛した女

愛の勝利を ムッソリーニを愛した女 “Vincere”

監督:マルコ・ベロッキオ

出演:ジョヴァンナ・メッツォジョルノ、フィリッポ・ティーミ、
   ミケーラ・チェスコン、ピエール・ジョルジョ・ベロッキオ、
   ファウスト・ルッソ・アレシ、コッラード・インヴェルニッツィ

評価:★★




 あのムッソリーニには愛人がいた。目と目が合った瞬間に恋に落ち、何度裏切られようと、それでも彼の愛を信じ、支え、求め続けた女がいた。名をイーダ・ダルセルという。

 ベニート・ムッソリーニと言ったら、“ファシズム”の代名詞のような存在。イタリアのみならず、世界で彼を知らぬ者はまずいない。その彼を愛した女の物語。てっきり文芸ドラマ風の見せ方になるのだろうとフンでいたのだけれど、どっこい感触はまるで違う。闇夜、恋人同士を演じることで難を逃れる出会いの場面こそ、メロドラマ顔負けのベタさであるものの、あとはもう、ギョッとする描写が連続する。

 とにかく女が怖いのだ。愛した貴方しか見えないとばかりに、文字通り、全てをムッソリーニに捧げていく。愛を語る、その目が本気ぶりを雄弁に伝える。のめり込み方はほとんどストーカーの域にあり、ムッソリーニが次第に嫌気がさしても仕方ないと思わせる。その姿は対象物に向かって一直線に突っ走るイノシシのようだ。イノシシ女と正妻のキャットファイトは前半の見せ場のひとつだ。正妻も正妻、負けず劣らず怖くて、「あの女を殺してやりたいわ!」と言い放つ。ひぃぃぃ、ムッソリーニ、どうやら女運には恵まれていない。それとも強い女が猛烈に好きだったのだろうか。

 イノシシ女を演じるジョヴァンナ・メッツォジョルノは妖気をまとったその妄執を迫力たっぷりに表現する。貴方しかいない。貴方もそうでしょう?…と見返りを求める女の、哀れにも似た愛を自在に操る。特に目周りの暗さから放たれるものには、オンナという生き物特有のねっとりとした情念が感じられ、ムッソリーニのみならず、観る者を硬直させる。資料映像やオペラ調の画面も味方につける。

 しかしムッソリーニよ、だからと言って女を精神病院に送ってしまうのは拙いだろう。さすがに大人数でかかってこられると、イノシシと言えど、身動きが取れなくなる。精神病院でもムッソリーニへの愛を語り、いくら拒絶され、非人間的扱いをされ、どん底に打ちのめされたとしても、女は決して愛を疑わない。ただ、超能力者ではないがゆえ、活動範囲が限定されてしまい、歪んだ愛が封じ込められてしまう。欲張りにも、崇高さな愛、或いはその悲劇性を描こうとしたがゆえの凡ミス。

 ただ、精神病院に閉じ込められた女の精神を、息子が受け継いでいることを示唆する件は面白い。さすがイノシシ女、牢獄のような病院から息子へ念を送っていたに違いない。そして息子を、ムッソリーニを演じたフィリッポ・ティーミによる一人二役にしたのも冴えている。ティーミはムッソリーニの息子というよりも、イーダの息子という解釈で演じている。ビンゴ!

 ムッソリーニは信念に溺れ、権力に溺れる。イーダは愛に溺れる。溺れたふたりの想いが擦り合わされたとき、時代が動く。ただ、それよりも女の怖さが際立つ。飽きることはなくとも、それでいいのかとふと思う。





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