オーケストラ!

オーケストラ! “Le concert”

監督:ラデュ・ミヘイレアニュ

出演:アレクセイ・グシュコフ、メラニー・ロラン、フランソワ・ベルレアン、
   ミュウ=ミュウ、ドミトリー・ナザロフ、ヴァレリー・バリノフ、
   アンナ・カメンコヴァ、リオネル・アベランスキ、
   アレクサンドル・コミサロフ、ラムジー・ベティア

評価:★★




 クライマックスはもちろん、パリの劇場、ロシアの即席楽団によるチャイコフスキーの「バイオリン協奏曲」演奏場面である。ズルイなぁと思う。それまでツメの甘さがどんなに目立ったとしても、或いは横着な構成がどんなに露になっていたとしても、ここをビシッとキメられると、全てが帳消し、それで十分という気分になる。いや、それまでがダラダラしていると、そのギャップによりむしろカッコ良く見えてくるではないか。

 思わず納得しかけた『オーケストラ!』はしかし、この大盛り上がりのクライマックスでも結局、冷静に観てしまうことになった。…と言うのも、楽団が奇跡的に見事なハーモニーを奏でる背後で、主人公の指揮者と若いソリストの因縁やその後の物語が語られてしまったからだ。せっかくダイナミックな楽曲構成を味わえる場面だというのに、なんて余計なことをしてくれるんだろう。ドサクサに紛れて、しかもセリフによって音の邪魔をする。演奏だけで全てを語ることがどうしてできなかったのだろう。楽曲が持つ力を信じられなかったところが、大変に野暮。

 そもそもが無理のある話なのである。FAXを盗み見たかつての名指揮者が自分と同じように落ちぶれた音楽仲間を呼び集め、ロシアのボリショイ音響楽団に成り済まして、パリの劇場で公演を行うというのだ。指揮者はその後の展開も含めて頭を悩ませるのだけれど、実は非常に彼に都合良いままに話は進んでいく。無理が無理を呼び、もう無理、絶対に無理…という状況下、どうやって話をまとめるのかと思ったら、音楽の力で捻じ伏せるという力技である。大人のためのファンタジーだと割り切るべきなのだろけれど、細部があまりに大雑把なので、もうひとつどっぷり話に浸かることができないのが問題だ。共産主義に絡めたエピソードもすっかり空回りしている。笑いを狙うも芸がない(エミール・クストリッツァ映画を意識しているフシあり)。ファンタジーという言葉を自分勝手に解釈する図太い神経が、作品を象徴していると言えよう。

 音の捉え方も案外平凡ではないか。色っぽくないのだ。楽団のメンバーの大半がジイサンばかりだからではない。何と言うか、話と巧く絡んでいないせいか、単調に聴こえる場面が多々あった。次々流れる有名楽曲なのに、なぜだか空気はがらんどうだ。クライマックスの演奏はさすがに熱がこもっていたけれど、これも色っぽいというよりは、力任せに押し切った感じだ。

 勿体無かったのは、指揮者の妻が話にほとんど絡んでこなかったこと。せっかく強烈な個性で前半のアクセント的存在になっているのに、後半姿すら見せやしない。キャラクターを大事にしているようで大事にしていない映画である。





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