戦場カメラマン 真実の証明

戦場カメラマン 真実の証明 “Triage”

監督:ダニス・タノヴィッチ

出演:コリン・ファレル、ジェイミー・サイヴス、パス・ヴェガ、
   ケリー・ライリー、ブランコ・ジュリッチ、クリストファー・リー

評価:★★




 床に横たわった男が上下逆さまに映し出される。大抵の場合、こういう撮り方をされると瞬時に誰かは判断できないものだろうに、今回は例外、アッという間にコリン・ファレルだと分かる。何と言っても、眉毛の主張が強烈だ。「俺はコリン・ファレルだ」と大声で叫んでいる。髪は肩まで伸びていて、ヒゲもボウボウ、間違いなくむさ苦しくて、うん、やっぱりファレルだ。こざっぱりとしたお行儀の良い役柄は全く似合わないファレル、汗臭い役柄にピタリとハマる。このときのファレルは、頭から血が流れ、自由に手足を動かせないほどに重傷を負っている。身体つきも顔つきもげっそり。極めて深刻。そんな生温いスター分析をするのは不謹慎のようにも思うのだけれど、『戦場カメラマン 真実の証明』はそういう冷静さを呼び起こす映画なのだ。

 物語の軸が「そのとき戦場で何があったのか」という謎に置かれていることは間違いない。1988年クルディスタン、イラクとの紛争が激化している時代を背景に、ファレル扮するカメラマンの身に降りかかった謎めいた出来事が解き明かされていく。ただし、この構成はほとんど無意味、全く機能していない。なぜか。

 散りばめられた謎を解き明かす鍵になりそうなエピソードや人物が、単なる紹介に終わっているためだ。「帰る場所はどこにもない」と告げる戦場ドクター。重傷度によって患者を分け、助かる見込みのない者に銃弾を浴びせる方式(原題の「トリアージ」はここから来ている)、肝心なところで別れてしまった二人の男。戦場から帰還した男を襲う何かのイメージ。身内からファシストと呼ばれる精神分析医。これらのパズルのピースが真実を導き出すのではない。ピースはピースでしかなく、そこから何も生まれない。

 特に後半の迷走はどうしたことだろう。ファレルを心配した恋人(ペネロペ・クルス、ウィノナ・ライダー風メイクのパス・ヴェガ)が彼を精神科医に診せ、ファレルの心の闇を探っていく。説教臭いやり口にも閉口するけれど、もっと驚くのはそうしてファレルの口から語られる話が、最後の告白以外、物語の謎とは無関係のものばかりという点だ。ファレルは余計な記憶を呼び起こし、まるで上映時間の引き延ばしを謀る。ファレルが真実を話せば、それで終わる映画。そして隠す必要性がさっぱり感じられない。ファレルは何故事実を語ろうとしなかったのか。そこのところを描き出さなくては、医師役のクリストファー・リーじゃなくても、この映画の存在価値が揺らいでしまう。

 せめて戦場を撮るカメラマンの実態を克明に記すべきだったろう。人と人が殺し合う現場ならではのルールやマナー、良い写真を撮るための工夫、カメラを向ける意義…。それが描かれないために、戦場が映画のために利用されているような印象すら受ける。ジェイミー・サイヴスが演じる友人のカメラマンは「美や希望」を撮るのだという。それとは逆にファレルは「飾れない写真」ばかりを撮り続けている。その対比もなされることはなく、物語は底の浅い真実の究明に必死だ。

 戦場に潜む狂気、そして無謀な取材。このふたつの要素が最後まで擦り合わされない。脚本の段階で、勝負は決まっていたように思う。





blogram投票ボタン

ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ