シンパシー・オブ・デリシャス

シンパシー・フォー・デリシャス “Sympathy for Delicious”

監督・出演:マーク・ラファロ

出演:クリストファー・ソーントン、ジュリエット・ルイス、ノア・エメリッヒ、
   ローラ・リニー、オーランド・ブルーム、ジョン・キャロル・リンチ

評価:★★




 もし自分に他人の傷や病を治癒する能力が具わったとしたらどうするだろうか。それまでいたって平凡な毎日を送っていたのに、突然誰もが欲しがるだろう力を手に入れてしまう。最初は混乱するかもしれない。どうして自分が力を授かったのかと考えるかもしれない。夢の中に迷い込んだのではないかと現実を疑うかもしれない。でもしばらくしたなら、それをなんとか人生に活かしたいと思うだろう。もっと言うなら、力を基にして幸せと快楽を手に入れたいと願うはずだ。野比のび太的発想。ドラえもんがいないだけ。

 『シンパシー・フォー・デリシャス』が監督デビュー作となるマーク・ラファロはしかし、主人公をのび太のようには扱わない。主人公はかつて才能溢れるDJとして活躍しながら、事故に遭い、現在はロサンゼルスのスラム街で車椅子に乗って車上生活をしている。その絶望は計り知れない。どうして俺がこんな目に遭うのだろう。俺が一体何をしたというんだ。いつか歩けるようになると希望をどこかに持ちながら、しかし光は一向に見えない。他人を治癒することはできても、自分の下半身は治せないというのが、その絶望を濃くしていく。だから彼は無闇やたらに他人に触れることに抵抗する。絶望の底は想像以上に深い。

 …のだけれど、悩んでばかりはいられないとばかりに、結局男は力を利用して社会的パワーを伸ばすことを選ぶ。遂にのび太になるのだ。一度決断をしたらとんとん拍子でコトは運ぶ。ラファロも思い切っちゃった。神父の言葉に従い、無償で能力を使う。寄付金の存在を知り、自分の取り分を要求する。ショービズの世界に使えると、加入したばかりのバンドのライヴでパフォーマンスする。メディアに取り上げられ、奇跡の力だと持ち上げられる。富と名声が雪崩れ込む。のび太大喜び。もちろんのび太は代償を払うことになるのだけれど、いきなり裁判劇になったり刑務所生活に堕ちるというのは、いかにもアメリカ的で冷静な気分になる。寓話性が大いに意識され、それゆえの語りのペースだと理解はできるものの、唐突で大味に感じられる。編集が粗いことも影響しているかもしれない。

 せっかく脇を有名どころで固めているのだ。彼らを物語の接着剤として使うことはできなかったのだろうか。善人に見えて実はしたたかな言動の神父(ラファロ自身が演じる)。清い心を持ちながら薬に溺れるベーシスト(ジュリエット・ルイスがハマり過ぎ)。音楽の才能よりも金儲けを優先する業界人(ローラ・リニーが相変わらず達者)。クセの強い人物を配置しながら、彼らが活かされないのはもどかしい。ジャイアンやスネ夫が活躍しなければ、のび太の個性も際立たない。

 以上の感想はしかし、実は何の意味も持たないかもしれない。ラファロは物語の根底に宗教というものを敷いていて、それと無縁の生活を送っている者には直に伝わりにくい映画の外見なのではないか。そもそも冒頭のあるセミナー場面から胡散臭く感じられる。身近に宗教がないことには、神の存在を心から信じられないことには、おそらく映画が言わんとしていることが実感し難い。宗教の難しさ。

 そうそう、主人公が加入するバンドのヴォーカルをオーランド・ブルームが演じている。これがなんともまあ、フツーのアンちゃん風で驚いた。すっかりオーラが消失。途切れることなく映画に出続ける大切さを感じる。





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