引き裂かれた女

引き裂かれた女 “La fille coupée en deux”

監督:クロード・シャブロル

出演:リュディヴィーヌ・サニエ、ブノワ・マジメル、フランソワ・ベルレアン、
   マティルダ・メイ、カロリーヌ・シロル、マリー・ビュネル、
   ヴァレリア・カヴァッリ、エチエンヌ・シコ、トマ・シャブロル

評価:★★




 恋愛映画と言うよりもスター映画。そして、スター映画と言ったら大抵はアメリカ映画だ。スターの魅力を輝かせるにはアメリカの、あのカラッとした空気感がピッタリなのだと思う。虚飾との相性が良い。だから、フランス映画、それもクロード・シャブロルのような監督作の中に、ひょっこりスター映画が出てきて驚く。『引き裂かれた女』はリュディヴィーヌ・サニエのスター映画だ。

 サニエは所謂正統派の美人女優とは違うだろう。ブレイク・ライヴリーを思わせる透明感ある顔立ち。垂れがちな目。スラリとした肢体。全身から人の好さが滲み出ている。サニエが演じるのがお天気キャスターというのがイイ。なるほどお天気お姉さん特有の親しみやすさで、ニコリと微笑むとあら不思議、男たちはコロリとマイッてしまう。未成熟性の吸引力。

 サニエの武器は無意識の小悪魔性だ。意識的に自分を演出するのではなく、佇まいの「隙」からふと出るものに魔性が潜んでいる。この「隙」には大抵、色気も隠れているもので、サニエはそう、魔性と色気が、男を引き寄せる非常に稀な形で合体している。老作家は自分のものにしたいと思う。金持ちの坊ちゃんはイチコロになる。そして、カメラの後ろにいるシャブロルもぞっこんのようだ。

 短編ミステリー小説風の展開は、シャブロルにしては淡白だ。本格的なサスペンスを求める者には物足りないだろう。でも仕方ない。シャブロルはサニエにしか興味ないとばかりに、サニエを愛らしく撮ることに全力を注いでいる。アイシャドーにポイントを置いたメイク、庶民的にも上流階級的にも変身する衣装、ほとんど唐突で都合が良い愛され方…。笑い顔も、泣き顔も、真剣な顔もてんこ盛り。

 サニエはフランソワ・ベルレアン演じる老作家にはストレートに愛を表現するけれど、ブノワ・マジメル演じるボンボンには素っ気無い。そのマジメルとのデート後、サニエが言う。「バカじゃなくて可愛いと思ったわ」。そう、マジメルはボンボンはボンボンでもバカボンボンなのだ。ギャグなんじゃないかと邪推するほど、意識的なバカっぷりが潔い。笑っていたと思ったら、直後に激怒する場面も一つや二つではない。物語よりもよっぽど笑えてサスペンスフル。

 老作家はシャブロルの分身と言えなくもない。だとすると、撮影しながら我に返っただろうか。ちょっとギョッとするような終幕には、それまでとは別の、冷静・冷徹な眼差しが感じられる。サニエに翻弄されているように見えて、実はそうでなかったとでも言いたくなったか。どっちでもいいか。





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