SUPER 8/スーパーエイト

SUPER 8/スーパーエイト “Super 8”

監督:J・J・エイブラムス

出演:ジョエル・コートニー、エル・ファニング、カイル・チャンドラー、
   ライリー・グリフィス、ライアン・リー、ガブリエル・バッソ、
   ザック・ミルズ、ロン・エルダード、ノア・エメリッヒ、
   ブルース・グリーンウッド、デイル・ディッキー

評価:★★★




 少年と未知の何かが向き合っている。そして少年が語りかける。目と目が合う。「辛いこともある。でも生きていけるんだ」。思わず「スピルバーグ!」と叫びそうになる。

 考えてみると、スティーヴン・スピルバーグが「激突!」(71年)で世に名前を知らしめてから40年にもなるのだ。スピルバーグ映画を観て育った者は数え切れないほどいるだろうし、その中から彼のようになりたいと映画界に足を踏み入れた者も当然のようにいるはずだ。映画ファンになってしばらくすると、好きな監督としてスピルバーグの名前を挙げるのは、あまりにもベタ過ぎて気恥ずかしくもなるものだけれど、少年少女が最初に惹かれるのは結局スピルバーグ映画に違いない。いきなりコーエン兄弟を好きになることはないだろうし、オリヴァー・ストーンに憧れるのはごく稀だろう。クリストファー・ノーランやジェームズ・キャメロンを挙げるのも何か違う気がする。30代以上の映画ファンなら、おそらくスピルバーグ映画(或いはジョージ・ルーカス映画)こそが映画人生のベースのベースにあるはずなのだ。

 J・J・エイブラムスは紛れもなくスピルバーグ世代のはずだ。何しろ『SUPER 8/スーパーエイト』はスピルバーグへのラヴレターのような作りになっている。これまでの作品を観ても、さほどスピルバーグの匂いを感じることはなかったのだけど、ここではスピルバーグ的要素てんこ盛り。リズム作りはスピルバーグに通じるものがあるし、カメラの動かし方や画面の感触もそうだ。伏線の回収の仕方もそれっぽい。何より、物語がやっぱり「スピルバーグ!」なのである。

 8ミリカメラにより映画作りに熱中する少年少女に、エイブラムスの子ども時代が投影されていることは想像に難くない。軸に置かれているのは、映画の撮影中に出くわした列車脱線事故を発端にしたミステリアスな事件だ。時は70年代後半。舞台はネバダとオハイオの間ぐらいだろうか。…となると、未知の何かの正体は自ずと読めてくる。未知の何かと少年少女が出会ったとき何が起こるのか。ここにエイブラムスの映画観、もっと言うならスピルバーグの映画感に通じるエイブラムスの映画観が見える。そこには視覚効果を派手に用いたアクション場面がある(列車脱線シーンの迫力!)。忍び寄る未知の何かに追い詰められるサスペンスがある。現実世界では起こりえない好奇心をかき立てるファンタジーがある。映画の魔法がたっぷりふり掛けられている。

 しかし、ひょっとしてエイブラムスがもっと思い入れ強く演出しているのは、それを装飾する少年少女たちの成長のドラマではないか。母を亡くした少年。父親とのギクシャクした関係。同じように父親と上手く付き合えない少女。映画を通じて結束を強める仲間。ほのかな初恋。専門用語が飛び交う映画撮影現場。通信手段となる無線。秘密の共有。住んでいる街中だけで世界が成立してしまう頃の価値観。まだ汚れを知らない魂が懸命になる姿に郷愁とロマンを感じ、それを大切に撮り上げている。だからだろう、派手な題材なのにSF色はあまり感じない。スピルバーグは良くも悪くも童心賛美的な映画人だけれど、エイブラムス自身はそれに全く抵抗ないのだろう。

 実を言うと、脚本が粗雑なところはある。軍の動かし方が大味だし、少年と父親の関係修復の流れも強引だ。ただ、さほど気にはならない。少年が少女に恋する瞬間を捉えた場面を始めとして、スクリーンに映っているものがキラキラ眩しく見える場面の方が圧倒的に多い。

 それは多分、結局「映画愛」に偽りがないところが来るのだと思う。精神論で映画を語るのは幼いことだけれど、この映画に限って言えば、それがイノチになっている。スピルバーグ映画を観て育った少年が大人になり、同じ映画界に入り、監督となり、彼に捧げるかのような映画を撮り上げる。時代を越えた映画愛の繋がりが涙腺を刺激するのだ。それが伝わる画になっている。

 でもそうすると、プロデューサーにスピルバーグの名前があるのは、どうなんだろう。憧れの人との仕事を実現したとしてニンマリするべきなのだろうか。個人的には全くスピルバーグと接触することなく、この映画を撮り上げる方がカッコイイと思うのだけれど…。





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