X-MEN:ファースト・ジェネレーション

X-MEN:ファースト・ジェネレーション “X-Men: First Class”

監督:マシュー・ヴォーン

出演:ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ローズ・バーン、
   ケヴィン・ベーコン、ジャニュアリー・ジョーンズ、オリヴァー・プラット、
   ジェニファー・ローレンス、ニコラス・ホルト、ゾーイ・クラヴィッツ、
   ルーカス・ティル、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、
   ジェイソン・フレミング、エディ・ガテギ、アレックス・ゴンザレス、
   ヒュー・ジャックマン、レベッカ・ローミン

評価:★★★★




 突然変異。生物の形質に親と異なるそれが表れ、これが遺伝する現象を指す。簡単に言うなら、生物に通常では考えられないほどに劇的な変化が起こるということ。ただ、どうやらこれは生物に限ったそれではない。映画製作においても時折見られるのだ。大抵の続編映画はつまらない。一作目よりスケールアップして、かえって大味になる陥るものが大半。極めて残念なことだけれど、それが現実。ところが、前作よりも飛躍的に面白くなる続編も、稀にではあるものの、存在する。例えばこの『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』。ミュータントの心象のドラマティックなうねりが更なる強烈な変異を遂げる。「スパイダーマン2」(04年)「ダークナイト」(08年)に続く、コミック原作映画の突然変異。グッと見入る。

 「X-メン」シリーズは「普通ではない」ミュータントたちを取り上げて、異種として生きる哀しみ、そしてそれにまつわる人間側の偏見を描き出してきた。テーマは今回も変わらない。ただ、これまでよりも斬り込み方が深い。シリーズの中心的存在であるプロフェッサーXとマグニートーの出会いと別れ、すなわちミュータント間の対立の起源となる話が語られる。つまり彼らの若き日を描くわけで、キャストが思い切り若返っている。マンネリの匂いが色濃くなっていただけに、これはかなり有効。物語からも柔軟さが引き出されている。

 プロフェッサーXとマグニートーはかつては友好関係にあった。人類との平和共存を目指すプロフェッサーXと母を殺され復讐に燃えるマグニートーは、特殊能力を持つ者同士であるという事実により互いにシンパシーを覚える。そして、共通の敵の打倒に向けて結束を強めていく。このあたりは共通項を持たなければ分かり合えないだろう者同士の磁力が、大変愉快な王道的効果を生んでいる。遂に出会ったふたりの大物が力を合わせる、そこにある高揚感が素晴らしい。背景にナチスの迫害やキューバ危機を盛り込むのも大胆不敵で面白い。

 ただ、それを描いただけでは傑作にはならない。より注目すべきはそこから先だ。目指す方向は同じでも、彼らの目的は違っている。そしてそれが袂を分かつ原因となる。このデリケートな部分を徹底的に凝視したことで、物語に厚みが出ているのだ。重要なのは結果だけではない。その根底にあるものということ。現代社会でも見られる行き違いの多くを思い出さずにはいられない。寛容と不寛容の距離感が鋭く、遂にそれが擦り合わされるときのドラマが深い余韻を残す。

 ダイナミックな物語にスパイスを振り掛けるのはキャストだ。誰もが見事な仕事ぶりだけれど、中でもマグニートーを演じたマイケル・ファスベンダーが圧倒的な迫力を見せる。タフな佇まいに忍ばせた傷ついた心。怒りの形相と、そこからこぼれる涙の重み。プロフェッサーX役のジェームズ・マカヴォイの柔らかな物腰とは対極にある鋭利な存在感が、正義を鮮やかに切り裂き、勧善懲悪が喜ばれる世界に捩れを引き起こす。テレキネシスという能力以上に、存在自体が危険。どこに暴走するのか分からない危うさに満ちている。そしてその人物造形の軸にある怒りと哀しみが揺るがない。マグニートーが動く度に画面の表情が変わる。

 マシュー・ヴォーン監督は「キック・アス」(10年)に続き、編集の技が冴え渡っている。中でもいちばんのクライマックス、カリブ海でのミュータントたちの人間を交えた激闘は、刻一刻と危機が迫る状況下でのサスペンスを存分に引き出す、完璧な呼吸を見せている。視覚効果が控え目になされ、メイキャップや美術の力で魅せようという心意気も良い。

 これまでの同シリーズはキャラクターの面白さに寄りかかり過ぎていて、退屈ではないものの、どこか腑に落ちないところが多かった。今回はキャラクターそれぞれのドラマ性を大切にしたことで、何段階も上のレヴェルに駆け上がった気がする。これまでの作品の印象を利用した演出には若干引っ掛かりを覚えつつ(キャラクターの行く末を知っているがゆえの哀愁も大きな効果を担っているのだ)、この劇的変化は結局大いに歓迎したい。





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