僕の大切な人と、そのクソガキ

僕の大切な人と、そのクソガキ “Cyrus”

監督:ジェイ・デュプラス、マーク・デュプラス

出演:ジョン・C・ライリー、ジョナ・ヒル、マリサ・トメイ、
   キャサリン・キーナー、マット・ウォルシュ、ダイアン・ミゾッタ、
   キャシー・ウィッツ、ケイティ・アセルトン、ジェイミー・ドネリー

評価:★★★




 離婚して7年にもなるのに、ずっと塞ぎ込んだ生活をしている男。自分を憐れんでばかりで、生活を変える気はさらさらない。口からは後ろ向きな言葉。目はいつも哀しげ。頬には寂しい表情。しかも、誰が見てもブサイク。全身からマイナスオーラを発散させている男。どう考えても恋には無縁だろうに、何がきっかけになるか分からない、突然人が変わる。自己憐憫なんてものは鬱陶しいだけのはずなのに、そこに酒が入り日頃の抑えてきた感情が爆発、さらに女の広い心が注がれることで、男の中で何かが変態を始める。女とダンスを踊った直後、突然ベッドシーンに切り替わるのが可笑しい。男は突如自炊を始め、身体を鍛え、コンドームの購入に走る。要するに男は恋に落ちる。恋の力が楽しく伝わる導入部だ。

 ところが、『僕の大切な人と、そのクソガキ』はここからロマンティック・コメディの定石から妖しく逸脱する。急カーヴを描く。恋の障害として女の22歳になる息子が置かれ、男と息子のバトルが繰り広げられるのだ。息子は母を過剰に愛している。マザコンという言葉とはちょっとニュアンスが違う気がする。母への歪んだ愛情が、男への嫌がらせに通じていく。

 ここでまず注目すべきは、ジョン・C・ライリーとジョナ・ヒルがマリサ・トメイを取り合うという設定だ。前述のようにライリーはブサイクだ。そしてヒルは若手俳優にしては珍しいくらいのデブだ。はっきり言って、どちらもロマンティック・ロールは似合いそうにない。それがトメイを取り合う、ここに妙な迫力がある。特に目を引くのはヒルの存在感だろう。大抵のデブは気の良い男として描かれる。デブ特有の大らかさがそう見せるのだろうか。ここでのヒルはそういう優しい気配を完全に封印している。そして押し出しているのは、正反対のサイコ的側面だ。巨体から滲み出る負の要素。ヒルは立っているだけで、不穏な気配を感じさせる。目が笑っていないのが怖い。ヒルのホラー性に目を見張る。

 巨体のホラー性はインパクトが強い。ライリーは何で対抗すべきだろうか。そうしてブサイク俳優が選んだのは、誠実さと寛容だった。ホラー性に無理に張り合うことなく、それまでの人生経験から生まれたに違いない落ち着いた心で、ホラー性を包み込む。この意外な掛け合いが笑いを生んでいるところが、この映画の急所だ。どちらもトメイに嫌われたくはない。さりとて相手を受け入れたくもない。その葛藤にホラー性や寛容が擦り合わされる。笑いの奥にはヒューマンなドラマも見える。一人の女性をめぐる単なる取り合いっこに終わらない、直に来るザラザラした感触がある。

 それにしても、繰り返すけれど、ライリーはブサイクだ。でもそれが魅力になっているから珍しい。人間サンドバックになってぶたれたのではないかと勘繰りたくなるほどに、顔が潰れている。それなのに動きがつくと、善人とも悪人とも想像がつかない不思議な匂いを漂わせ始める。人間的な臭みが完璧にプラスに働いている。

 トメイはもうちょっと綺麗に撮ってあげても良かった。やたら生活に疲れた感じが強調されていて、溌剌した空気に乏しい。ライリーの恋人であり、ヒルの母親であるという点を意識したがゆえの撮り方だったのだろうか。

 終幕は映画のテーマが言葉によって示される。良く言えば丁寧、悪く言えば、お節介。登場人物の掛け合いから悟らせるスマートさが欲しかった。





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