ラブ・クライム

ラブ・クライム “Personal Effects”

監督:デヴィッド・ホランダー

出演:ミシェル・ファイファー、アシュトン・カッチャー、キャシー・ベイツ、
   スペンサー・ハドソン、ジョン・マン、デヴィッド・ルイス、
   ロブ・ラベル、アレクス・ポーノヴィック、ブライアン・マーキンソン

評価:★★




 派手な作りではない。ミシェル・ファイファーとアシュトン・カッチャーのスター共演が実現しているとは言え、語り口は内観的そのもの。音楽はほとんど流れない。色合いも原色とは無縁の落ち着いたもの。そもそも舞台となる田舎町の暮らしも風景も寂しい。主人公の男女の悲劇的な境遇を考えると仕方がない。

 だから、あぁ、『ラブ・クライム』を物語の吸引力、或いは演出の力強さで勝負する、硬派で慎ましいインディペンデント映画だと思ったら大間違い。細部を観察していくと気づく。いや観察するまでもなく気づく。ほとんどあざといまでにあからさまに映画的かつ作為的要素を畳み掛けている。外見の地味さとは対照的な細部の装飾過多が煩い。

 男と女。ふたりには親子ほど離れた年齢差がある。彼らは肉親を殺害されて傷を負っている。どちらも裁判真っ只中。被害者の会に出席するほどに心は寂しい。ちらつく銃社会の現実。知的障害者の犯罪。聾唖者の社会の受け入れ。…挙げればキリがない作り込んだ設定。まるで思いついたアイデアを考えることなく投入した印象。これだけ並べ立てれば、そりゃもう勝手に物語は動き出すだろう。

 ファイファーとカッチャーはこの闇鍋のような渦の中に放り込まれる。顔のお直しが目立つとは言え、持ち前の生活感を活かした役作りのファイファーと、まだまだ若さが弾けるカッチャー。意外にしっくりきているのは、カッチャーの器の大きさゆえかもしれない。バカコメディに出ても容易く溶け込むカッチャーなのに、予想外に人間的大きさを感じさせるようになってきた。それは演技力云々とは全く別の財産だ。彼らのラヴシーンは当然のようにファイファーが主導権を握る。初めて唇を重ねるときの、リードの仕方に経験の重要性が見える。しかし、見落としてイケないのは、カッチャーが慌てることなくそれに応えている点だ。大人の女に喰われても、喰われたように見せない余裕がある。言い換えるなら、経験豊かな大人の女に釣り合う広い胸を持っている。それに実際、レスリング選手という設定もあり、身体をガッチリ作っている。

 …と言うように、詰め込まれた要素はたっぷり。観るべきところは多いのに、観ている間は別々の物語を観ている気分を強いられる。何をいちばんに描きたいのか焦点が定まらない。話の真ん中を走る軸と呼べるものが見当たらない。まとめ上げる術がないのに枝葉を広げられるだけ広げたようで、その収拾が中途半端なままに終わっていく。設定のイチイチはデリケートなのに、それをフィルムに焼き付ける作法が雑なのだ。例えば、ファイファーの聾唖の息子の終盤の動かし方など、本当に安っぽい。

 ナレーションで語られる。これは「戻らない誰かを待ち続ける人々の物語」だという。それを実感することなく、虚しく言葉だけが響く。何しろ観終わって最も心に残るのは、ファイファーがプロデュースした結婚式の風景なのだから。





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