アジャストメント

アジャストメント “The Adjustment Bureau”

監督:ジョージ・ノルフィ

出演:マット・デイモン、エミリー・ブラント、アンソニー・マッキー、
   ジョン・スラッテリー、マイケル・ケリー、テレンス・スタンプ、
   ローレンス・レリッツ、スティーヴ・ソーレソン

評価:★★★




 そう言えば、「トゥルーマン・ショー」(98年)では男の人生が“天”から操作されていた。「トゥルーマン・ショー」がフィリップ・K・ディックの小説にヒントを得ていることは有名だけれど、この『アジャストメント』もまた、ディックの短編小説を基にしているという。もし人の人生が他人によって操られていたとしたら?ディックと言ったら「SF」なわけで、もちろんここでもその要素が散りばめられている。この世の中は人の運命を操る「運命調整局」と呼ばれる組織が動かしていて、出会ってはいけなかった男と女がうっかり惹かれ合ってしまったことから、「運命調整局」の過剰な介入が始まるという物語。

 はっきり言って、突込みどころは満載だ。調整局の人間がトレンチコートに帽子というスタイルで統一されているのはちょっとフィルムノワールっぽくて良かったのだけれど、その他の調整局描写は笑いを堪えるのが難しい、マヌケぶりが際立つそれだ。コーヒーをわざと溢させるだとか電話を繋がらなくするだとかわざと事故を起こすだとか、日常の些細な出来事により導く微笑ましいものから始まったと思ったら、いきなりどこでもドア風の秘密の通路が出てくるわ、念力で物を動かすわ、時間を止めて人間の記憶を操作するわ。しかも仕事のベースになっているのは「運命の書」と呼ばれる運命が書かれた書物というウルトラC的アイテムである。ズルイと言いたくなった次の瞬間には、変装というレトロな手を使い、うっかり居眠りこいて任務を失敗するというヘマをやらかす。それを挽回するためにニューヨークの街中を全力疾走する様よ。

 SFというものは細部の作り込みが鍵になる。どういう世界観かを緻密に描き出してこそ、物語が生きる。その点でこの運命調整局の描写は失敗している。調整局の人間に超人的な能力を与えたはいいけれど、そこに明確なルールが見当たらず、せいぜい帽子や雨に縛りを受けるぐらいだ。主人公はこの組織を出し抜いて人生を取り戻そうとするのだけれど、その際あまりにも簡単に調整局の人間を突破していく。でも当然なのだ。この組織、相当にツメが甘い。よくぞこれまで大きな問題が噴出しなかったものだ。なんとマヌケなのだ。そしてそれが可笑しい。意図しないところでコメディになっている。

 つまりほとんど珍作に近づいている。…にも関わらず、ちょっとした風格を感じてしまうのはキャストのおかげだろう。理想に燃える若き政治家を演じるマット・デイモンがすっかり大物の趣を湛えている。「ジェイソン・ボーン」シリーズでアクションスターとして開花したデイモンが、ボーン役には程遠いものの、肉体を使って障害を次々突破していく過程には爽快感がある。誠実さに嘘臭さがない。

 相手役を演じるエミリー・ブラントもバレエダンサーらしい締まった身体つきと捻りの効いた美しさを発散。デイモンが彼女にこだわってしまうのも無理もないと思わせる。こういうSF世界で際立つ美貌の条件である、しっとりとした佇まいがブラントには具わっている。デイモンとの相性も予想以上に素晴らしい。

 デイモンとブラントは作られた運命に立ち向かう。何のために立ち向かうのかというと、愛のために立ち向かう。そうなのだ。実はこの映画、SFというよりもラヴストーリーの要素が色濃く出ていて、それが功を奏している部分が多い。デイモンとブラントが醸し出す、強烈に惹かれ合いながら邪魔をされ、離れてもまた引き寄せられる、それこそ運命としか言いようのないもの。その立ち上がらせ方が冴えている。終幕、一緒になって逃げ惑うとき、ふたりは常に手を繋いでいる。そんなことでは走るのが遅くなってしまうだろうに、でもそうせずにはいられない結びつきの強さが良く出ている。これが初監督となるジョージ・ノルフィは、SF攻撃は失敗したものの、ロマンティック攻撃では見事勝利したのだった。





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