草食男子の落とし方

草食男子の落とし方 “Stay Cool”

監督:テッド・スミス(マイケル・ポーリッシュ)

出演:マーク・ポーリッシュ、ウィノナ・ライダー、ショーン・アスティン、
   ジョシュ・ホロウェイ、ヒラリー・ダフ、フランセス・コンロイ、
   チェビー・チェイス、マーク・ブルーカス、ジョン・クライヤー

評価:★★★




 人は多かれ少なかれ、青春真っ只中の学校生活の思い出が胸に焼きついているもので、そこには当然ドラマが存在する。喜怒哀楽が盛り沢山に溢れ、ゆえに物語を作りやすい。実際、かつての仲間たちが再会する映画は数え切れないほどある。その場合、郷愁を刺激、良い話風にまとめるのが大半で、ノスタルジックに浸るのも良いけれど、感情の水浸しは避けて欲しいとつい思う。『草食男子の落とし方』はそういった類似映画とは感触が違っていて、オフビート色が強い。小説家として成功した主人公の青年の体温が、妙に低いのだ。

 青年は怒らないし、泣かない。喜びを爆発させることもないし、哀しみに浸ることもない。決して風変わりな思考回路で生きている男ではないのだけれど、万事において自分を押さえ込むタイプのようだ。それは感情がほとんど表に出てこないことを意味していて、となるとこれは感情移入し難いということだ。

 ところが彼は魅力的だ。母校の卒業式のスピーチを頼まれて帰郷した彼は、高校時代に好きだった女の子とコンタクトを取り、デートを重ねるようになる。派手さはない。気が利いているわけでもない。ただ、彼はそれなりに生きてきた人生の知恵、生きていく知恵を具えている。経験と言い換えてもいい。彼は過去に向き合う。過去に寄り添う。しかし、今この瞬間を生きる。センティメンタルな気分で自分に酔うことがない。この青年のパーソナリティは映画の作り手の物語に対する姿勢でもあるだろう。

 学校で人気者の女の子に懐かれる件が可笑しい。プロムの同伴者にまで選ばれるのに笑ってしまう。37歳の男が十代の女の子に振り回されて、でも理性だけは保つ。もちろんここで彼は青春を取り戻そうなんて思っていない。低い体温のままに一夜を楽しむ。人には向き不向きというものがあって、それはなかなか変わらない。青年の友人が「ある種の人間は成長しない」という名言を吐くのだけれど、それに通じる現実感がある。人は変わらないし、変われない。無茶苦茶な事態を描いていも、人間の根っこの部分を冷めた目で見ている。そのうっすらと寒い感じが映画の個性に繋がっていく。

 青年を演じるマーク・ポーリッシュは、米粒のような輪郭にヒュー・ローリーを思わせる顔の作りを乗せた印象で、決してハンサムではないのに見入ってしまうものを持っている。ひ弱そうで、いつも困った顔をしていて、別段オシャレでもなくて、でもちょっとだけロマンティストな役柄に合っている。卒業アルバムに書かれた「優しくしてくれてありがとう」との言葉を大切にしていて、昔とは違う景色に出向いてキスもする。少々少女趣味に思えるところもあるのだけれど、それがしっくりくる。

 ヒロインのウィノナ・ライダーへのラヴレターのような側面も見え隠れする。ゴシップにより転落してしまった女優を再び輝かせようと、その清潔感を目一杯引き出している。無造作なショートへアは絶好調だった90年代を思わせ、誠実に青年と対話しようとする姿勢は「心」が感じられる。ライダーの部屋の内装もとても可愛らしくて、特にグリーンとピンクのチェック柄のベッドシーツがイイ。彼女を薬剤師役に置く意地悪なところもありながら、彼女を見つめる目はとても眩しげだ。ただ、今のライダーは目を見開くとちょっと怖い。顔にティナ・フェイが入ってきた気もする。

 青年同様、派手さで目を引く映画ではない。ただ、青年の新作の文章をナレーション代わりに挿入していく手法に見られるように、趣味良くまとめられている。ほろ苦くて、でも人間の温かさが静かに伝わる。





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