コリン LOVE OF THE DEAD

コリン LOVE OF THE DEAD “Colin”

監督:マーク・プライス

出演:アラステア・カートン、デイジー・エイトケンス、
   リアンヌ・ペイメン、ケイト・オルダマン

評価:★★★




 映画作家としては、自由に使える金が多いに越したことはない。表現の幅は金があった方が格段に広がる。要らなければ使わなければ良いけれど、必要なのになかったらどうしようもない。しかし、金がなかったらなかったで何とかしてしまうのが人間というもので、金が使えないときはイマジネーションでカヴァー、それが思わぬ良い結果を生み出すこともある。英国映画『コリン LOVE OF THE DEAD』はそのあまりにも幸運な一例と言える。ゾンビを取り上げたホラーを、これまでとは全く別の斬り口で魅せる。

 製作費はたったの45ポンドだという。いくらなんでも少な過ぎる。細かく見ていくなら、実際はもうちょっとかかっていることだろう。と言っても、やはり低予算であることは隠しようがない。カメラはブレにブレて酔いを誘う。暗がりでは見え難く、それどころか何が起こっているのか分からない場面もある。ゾンビたちの動きもお笑いが入っているところが目立ち、コントギリギリだ。それに何と言っても、メイクが可愛らしい。場面によってはメイクのし忘れと思われる箇所もある(照明の問題かもしれない)。血が血に見えないという欠点も少なくない。要するに、あまり怖くはない。微笑ましいのだ。しかし、生温くはない。エッジが効いている。

 最もお手柄だったのは、物語をゾンビの視点から描き出している点だ。大抵のゾンビ映画は、ゾンビから逃げ惑う人々を描くわけだけれど、ここでは一貫してゾンビの一人称が守られる。ゾンビに噛まれたばかりの青年が、町を彷徨う様、肉体的にも精神的にも彷徨する様に、ある種の詩情が漂っているのに驚く。ゾンビの心の旅。その孤独に思わず胸を締め付けられる。

 ゾンビが暴れる場面になると何が映っているのか分からなくなるのは辛いものの、それ以外の場面ではカメラは冷静だ。映すべきものと映さなくても良いものが分かっている。例えば冒頭、友人宅に逃げ込んできた主人公が手洗いをする際、青年本人ではなく、青年が持ち込んできたカナヅチをじっと映すショット。そして実は青年が既にゾンビに噛まれていて、袖口から血が落ちてくる一呼吸の流れ…など、なんとも滑らかだ。この場面は映画のラストショットにも繋がっていて、構成もかなり練られていることがよく分かる。手持ちカメラによる撮影ゆえ、思いがけずドキュメンタリー的面白さが出たのも運がある。

 タイトルロールを演じるアラステア・カートンは、低予算の中にアイデアを次々投入するマーク・プライス監督の演出に見事に応えている。ガイ・ピアースとヨアン・グリフィズをミックスしたような風貌のカートンが、ゾンビメイクの中に悲哀を鮮やかに浮かび上がらせる。白塗りもなかなか似合っている。プライスは役者を観る目も確かのようだ。

 立ち上がってくるのは、ゾンビとして生きることを強いられる哀しみだ。そしてその底には愛が流れていたことが語られる。それに真実味をもたらしたことこそ、映画の勝利。ゾンビ映画の枠を飛び出す粋の良さ、映画の才能はどこに眠っているか、分からない。





blogram投票ボタン

ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ