ミスター・ノーバディ

ミスター・ノーバディ “Mr. Nobody”

監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル

出演:ジャレッド・レト、サラ・ポーリー、ダイアン・クルーガー、
   リン・ダン・ファン、リス・エヴァンス、ナターシャ・リトル、
   トビー・レグボ、ジュノー・テンプル、クレア・ストーン、キアラ・カゼッリ

評価:★★




 人間が永遠の命を手に入れた時代。限りある命を持つ最長老の老人が死に行こうとしている。どうやら彼が『ミスター・ノーバディ』の主人公のようだ。いかにも近未来的な美術。妖しいメイクの医師。唐突な催眠術。天使が出てきて、ミュージカル調に歌が流れ出す。SFに縛られることのない、不思議で挑戦的なオープニングだ。ここで振り落とされた観客は、付いていく気力が失せるだろう。

 何しろ事態はますます混迷を極めていく。老人が語り出す人生は幾通りもあって、全てが真実だと考えると、矛盾が至るところに顔を出す。何が言いたいのか、明確な軸も見当たらない。哲学的なところはスタンリー・キューブリック、迷宮的なところはデヴィッド・リンチを思わせるところがある。人生の断片が時間のベルトを妖しく揺らしていく。

 こういう作りだと話の筋を追いかけるのは無意味なことだ。…となると、画面に色気が欲しいところなのだけど、残念なことにその点で大いに物足りない。作り込まれた構図や鮮やかに目に焼きつく撮影、キャストもそれぞれが役柄を生きている感じが伝わってくる。それなのに画面から機械的な印象しか受けないのは、おそらく編集が自己満足に終わっているからだ。作り手の熱意がパズルのハテハメに向かっていて、人物に寄り添おうという気配に乏しい。頭で考えてはいるものの、本能的な部分に任せた野性が希薄なため、色っぽくなりようがないのだろう。

 そして、散々枝葉を広げておいて、突然「結末」を用意するのも野暮という気がする。ここでは「選択」という言葉が大きな意味を持ち、「人生にはどんなことも起こり得る。全てに意味があるのだ」というメッセージまでもが言葉にされる。何故、急に丁寧になるのだ。話を甘ったるくしているだけにしか思えない。主人公の可能性は広がっても、映画の可能性が広がっていかないもどかしさ。巧い監督にありがちな罠に、まんまとハマっている。

 物語と関係ないところで笑ってしまったのは、老人のメイクだ。演じているジャレッド・レトのトレードマークであるぱっちりオメメが、シワクチャの誰か分からない状態にまで変貌を遂げているのに、妙に主張をするのだ。「俺はジャレッド・レトだぞ!」と語り掛けてくる。ジイサンになってもアイドルオメメ。なかなか強力な目と言って良いかもしれない…。





blogram投票ボタン

ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ