アンノウン

アンノウン “Unknown”

監督:ジャウマ・コレット=セラ

出演:リーアム・ニーソン、ダイアン・クルーガー、
   ジャニュアリー・ジョーンズ、アイダン・クイン、ブルーノ・ガンツ、
   フランク・ランジェラ、セバスチャン・コッホ、
   オリヴィエ・シュニーデル、スタイプ・エルツェッグ

評価:★★★




 一体リーアム・ニーソンに何が起こっているのだろう。器の大きい俳優だとは思っていたけれど、還暦が近づいてきてから一気にアクション俳優に目覚めてしまった。80年代、90年代でもアクションが盛り込まれた作品には出演していたけれど、アクションそのものが主役になる映画はほとんどなかった。文芸作品の一部分としてアクションが用意されている映画が大半だった。それがどうだ。「96時間」(09年)「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」(10年)という純度100%のアクション映画を連発。それに続くのが『アンノウン』で、前二作に続き、そんなわけないだろー、と吹き出してしまうアクションで魅せる。ニーソンの「暴走」シリーズ第3弾とでも勝手に銘打ちたい気分。

 アクション純度が高いと言っても、このニーソン映画は脳天気だけには終わらない。舞台が冬のベルリンになっていて、画面には暗く沈んだ空気が定着している。ちょっとアルフレッド・ヒッチコック映画を意識している気配も感じられる。交通事故で昏睡状態になった男が、記憶をなくした状態で目覚めたときに直面する危機。アイデンティティーの喪失が二転三転の急カーヴを描いていく。嬉しいのは古風な味が散りばめられていることで、古典的な題材に合わせた画面作りになっているのが、予想外に色っぽい。衣装やメイク、美術から、今の時代に沿いながらも、古めかしい魅力が引き出されている。

 尤も、そうした物語背景は脇役に過ぎない。やっぱりニーソンの暴走をポカーンと口を開けながら眺めるというのが正しい見方だ。何しろ物語の軸となる謎解きには無理がある。いくらなんでも現実感がないだろう。細かい粗に突っ込みを入れようと思えば、いくらでも入れられる。もちろんそんなことに時間を費やすのは、極めて愚かな行為でしかない。図体はデカいが凡人であるニーソンが、強力な腕力や一流のドライヴテクニック、鋭い機転を駆使して、迫り来る危機を寸前のところでかわしていく様に、笑って喝采を贈るべきだ。いや、知らず知らずの内に贈らずにはいられなくところがニーソンの力量か。

 「96時間」とは違って今回、ニーソンの怒気メーターは急激には上昇しない。記憶を失った不安があるゆえ、困惑の気持ちが強いのだろう。怒りが沸点に達するまでには時間がかかる。しかし、一旦メーターが振り切れると、ニーソンの猛進は止まらない。目的遂行のための火の玉となる。熱いぞニーソン!ヤッチマイナ!

 ニーソンもそうなのだけど、配役がとにかく素晴らしい。Wヒロインを務めるのはダイアン・クルーガーとジャニュアリー・ジョーンズ。クルーガーが巻き込まれた女の開き直りを凛々しく魅せれば、ジョーンズはヒッチコック映画風のメイクアップでクラシカルな美しさを発散する。アイダン・クインの不敵な表情も、フランク・ランジェラの怪しい佇まいもキマッている。セバスチャン・コッホの登場も嬉しいところだ。しかし何と言っても優れているのは、ブルーノ・ガンツの起用だ。いわくあり気な匂いをまとったガンツの口から「シュタージ」という言葉が出てきたときには嬉しくて嬉しくて…。彼らの強力なサポートを受けながら、ニーソンが気持ち良く暴走する。

 惜しいのは、古風な細部が積み重なっていくところが面白いのに、最後までそれだけで我慢ができなかったところだ。クライマックスにある「爆発」が起こる件が、それまでの余韻を吹き飛ばしてしまう。「暴走」はニーソンだけで十分だというのに。ニーソンの真の敵は物語の外にいたというオチになってしまってはつまらない。





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