ニューヨーク、狼たちの野望

ニューヨーク、狼たちの野望 “Staten Island”

監督:ジェームズ・デモナコ

出演:イーサン・ホーク、ヴィンセント・ドノフリオ、シーモア・カッセル、
   ジュリアン・ニコルソン、イアン・ブレナン、リン・コーエン

評価:★★★




 舞台となるスタテンアイランドは、ニューヨーク湾を挟んで、マンハッタンの目と鼻の先にある。しかしここには、マンハッタンのような華やかさは感じられない。天気予報はスルーされるし、予算配分が忘れ去られたこともある。ギャングが多くて、森は死体置き場としての一面も具えている。『ニューヨーク、狼たちの野望』には3人の男がメインとして出てくるけれど、真の主役はもちろんスタテンアイランドだ。世界一多面的な街、ニューヨークの影を味わう映画だ。

 男たちが眩しそうにマンハッタンを見つめるショットが何度か出てくるのが印象的だ。彼らは息詰まった人生を打破したいと夢を見る。そしてもがく。小所帯のギャングのボスはスタテンアイランドを自分のものにしたいと言い放つ。清掃屋に勤める男は生まれてくる子どもの遺伝子操作のために大金を工面したい。肉屋で働きギャングから死体処理を任されている老人は競馬で当てた大金の使い道が分からない。彼らの願いに現実味が感じられないのが面白い。自分を過大評価しているのだろうか。それとも自分を分かっていないのだろうか。彼らの中に黒く蠢く想いが暴走し始める。でも、その愚かさが愛しくも感じられる。大なり小なり、人は欲望を抱える生き物だからだ。

 中でも老人の孤独が胸に沁みる。聾唖で家族もいない。職場で肉を扱い、裏で死体を扱う。金が手に入っても、買うものと言ったら新しい仕事着ぐらいだ。人の心を満たしていくものは、物質ではない。それに気づいてしまった老人は、一体どうすれば良いのだろう。ギャングも清掃屋もそれに気づかない。老人を演じるシーモア・カッセルの寂しげな佇まいが静かに胸に染み入ってくる。

 3人の人間の人生を交錯させるという手法に新味はない。時間軸を戻して描き出す作法も特別な効果は上げていない。個性となっているのは、夢に溺れたがゆえの登場人物のズレ方にあるだろう。もう少しで死ぬハメになるところだったギャングがある「運動」に走ったり、清掃屋が生まれてもいない子どものために犯罪に手を染めたり、老人が怒りに駆られて穏やかな彼に似つかわしくない決断を下したり…。それぞれ迫力に欠けるのは残念だけれど、代わりに愛敬が感じられる。バカらしくてちっぽけで。

 それからひとつの場面が終わる度に、まぶたを閉じるかのように画面が少しずつ暗くなるのが、3人が見ている幻想なのではないかと思わせるところがある。そうだとするなら、どこか現実離れしてる彼らの行動も腑に落ちる。

 話は一応まとまるものの、結局のところ、どれだけ踏ん張ってもその小さな世界からは逃れられないと言われているようで、胸が痛む。ここから一人が消えても、この世界は変わらず、寂しげな表情を湛えている。このあたりのスタテンアイランドの演技はなかなかのものだ。ただ、表情が綺麗過ぎる。光の捉え方が明る過ぎて、情緒には欠けるかもしれない。スタテンアイランドの傷をもっとクローズアップしても良かったと思う。





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