恋は3,000マイルを越えて

恋は3,000マイルを越えて “Jusqu'à toi”

監督:ジェニファー・デヴォルデール

出演:メラニー・ロラン、ジャスティン・バーサ、
   ヴァレリー・ベンギーギ、ビリー・ボイド

評価:★★★




 主役男女がなかなか会えない映画というと、古くは「邂逅」(39年)や「めぐり逢い」(57年)があるし、最近だと「めぐり逢えたら」(93年)が有名。カナダ・フランス合作映画『恋は3,000マイルを越えて』の主役男女もなかなか顔を合わせることができない。逢いたいのに逢えない状況というのは、よほど恋愛の脇腹をくすぐるものらしい。主演スターのケミストリーが作品の成否に大きく影響するロマンス映画において、この設定はかなり危険だというのに…。携帯電話やインターネットで手軽に繋がることができる今だからこそ、かえって新鮮に映るところがあるのかもしれない。

 フランス在住の女とアメリカ在住の男の物語。男の方がコーラのキャンペーンで当選、パリにやってくる。空港でトランクを紛失したことをきっかけに恋が動き始める。パリが魔法の舞台になることは多いけれど、ほとんどパリの街並は活かされない。寂しげな建物が背景に映るくらいだ。ではトランクを空けた途端に魔法が解き放たれるのかというと、それも違う。強調されるのは、女が人付き合いが苦手で孤独な毎日を送っていることと、男が恋人にフラれてやけっぱちな心のままホテルで酷いサーヴィスを受けるがままでいること。なんとシケたふたり。本当に恋が始まるのかどうか不安が過ぎる。

 不安は半分だけ的中する。中盤はこの男女の、あまり見習いたくないイタイ言動を紹介するエピソードに割かれてしまう。子どもの心を持っていると言えば聞こえは良いかもしれないけれど、実は単純に大人になり切れないところのある男。間違って受け取った男のトランクを開けて彼はどんな人だろうと妄想の世界に突っ走る女。特に女がイタイ。いや怖いと言ってもイイ。汚いスニーカーやガキ丸出しのシャツを見て、どこに行っちゃうのか。ガルシア・マルケスの「百年の孤独」が入っていたことが大きなポイントになったとは言え、何という思い込みの激しさ。ちょっと前のオドレイ・トトゥ風ヒロインである。

 ただ、役者の魅力に救われているところがある。これまでで最も透明感を意識した感のあるメラニー・ロランは、薄いブルーの瞳が効いている。現実感のない行動に走っても、どこか冷めたところを感じさせるのがイイ。ジャスティン・バーサはこれまでと全く同じ役柄で登場、子どもっぽいけれど温か味があるので悪い気分にはならない。

 景気の良いエピソードは出てこないし、ふたりはなかなか顔を合わさないし、画面も寂しいし…と思ったところで、ようやく魔法の効果が表れ始める。トランクが戻ってきた男が一旦アメリカに帰ったあたりからスピード感が出てくる。女はトランクを返却する際、自分を紹介するアイテムをいくつも滑り込ませていて、それが潤滑油となる。最初は相手にしていなかった男も俄然乗り気になる(彼女の写真を引き伸ばして飾るのが可笑しい)。再びフランスに飛んだ男とそれを迎え入れる女を見ていると、恋の盛り上がりの楽しさと同時に、「人と人の繋がり」の不思議さを感じ入ることになる。上手く付き合えそうになかったり、嫌な印象を持ったり、煩いだけに思えり…普通の街角の人々が、ふたりを引き合わせるのには必要だったことが見えてくる。伏線を伏線と思わせない芸が見え隠れする。

 それに感心していたところで魔法の力が消え始める。ふたりは再び離れ離れになる。そうして今度は「運命」と言うしかないものがせり上がってくるのだ。物語の組み立てが意外に凝っている。恋が生まれるまでが、現実と夢の中を行き来しながらスケッチされていくところが、この映画の美点だ。





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