幸せがおカネで買えるワケ

幸せがおカネで買えるワケ “The Joneses”

監督:デリック・ボルテ

出演:デミ・ムーア、デヴィッド・ドゥカブニー、アンバー・ハード、
   ベン・ホーリングスワース、ゲイリー・コール、グレン・ヘドリー、
   ローレン・ハットン、クリス・ウィリアムス

評価:★★★




 ある家族が郊外の高級住宅地に引っ越してくるところから始まる。青く澄み渡った空。緑の芝生。ピカピカの車。ゴミはなく、人々は礼儀正しい。優しそうな父親。美しい母親。好青年の匂いを発散する息子。学園の人気者になれそうな娘。彼らを取り囲むのは高級品ばかり。『幸せがおカネで買えるワケ』は絵に書いたように幸せな家族が描かれる。ひょっとして最近やたら多い機能不全の家族の物語だろうかと想像するのだけれど、これが意表を突いたエピソードにより粉々に打ち砕かれる。真夜中、世間が寝静まった頃、素っ裸になった娘が父親のベッドに潜り込むのだ。父は唖然としながら、でも嫌な顔を見せない。母も驚くほど冷静だ。娘は乳を父に見せても平然としている。一体全体何が起こったのか。

 別に近親相姦が取り上げられるわけではない。実は彼らは家族でも何でもなく、理想の家族を演じ裕福な生活スタイルを送りながら、新商品を近所中にアピールする即販チームなのだ。モデルハウスならぬモデルファミリーが彼らの正体だ。人形のように美しい人々が出てくるのは「サロゲート」(09年)を連想するし、偽りの美しい世界は「トゥルーマン・ショー」(98年)を思い出す。しかし、最も近いのはTVシリーズ「デスパレートな妻たち」(04年~)でマーシア・クロスが演じるブリーの家庭のような気がする。表面上は完璧な家族でありながら、それは世間を徹底的に気にしたブリーのプライドにより成り立っている。中身はがらんどう。ビジネスでしかない分、この映画の家族の方が何倍も虚しいだろう。彼らは物質主義に冒された社会を皮肉る存在だ。仮面ファミリーに憧れ、外見上の煌びやかさに惹かれ、しかしその実体には気づかない。この設定こそ、映画の命。

 中盤はモデルファミリーによる生活の中での商品売込みがメインとなる。彼らのさり気ない商品アピールと、それにまんまと乗せられる人々の愚かさが可笑しい。美容院や学校、ゴルフ場を中心に、彼らは順調に業績を上げていく。意外に強引な手法ではなく、「押してダメなら引いてみな」という基本が守られている。もちろんビジネスが危険に晒されるときもある。原因となるのは、ビジネスの経験不足や性癖、性欲、或いは情の脆さだったり…完全にビジネスに徹し切れない人間性だ。ここに作り手のテーマへの向き合い方が見える。まともさにホッとするやら甘ったるいやら。

 重要なのはキャストのハマり具合で、人の好さそうなデヴィッド・ドゥカブニー、強靭さが見え隠れするデミ・ムーア、完璧なメイクと妖艶さで男を惑わせるアンバー・ハード、着崩しに芸があるベン・ホーリングスワースと、皆家族を率なく演じる。特にムーアはある意味狂気を秘めた消費社会の落とし子として適役だ。目が寄り過ぎなのが怖くて、この際悪くない。

 もちろん、「理想の家族」は壊れていく。原因をこの仕事の息苦しさに見つけるのはつまらないことだ。どう完璧に演じても無理が生じてくるのは目に見えている。彼らが時折人間性を覗かせるというのとは違って、そもそも仕事が倫理的に間違っているのだと宣言するのは、退屈な正論でしかないだろう。

 しかも正論を証明するために用意されるのは、「父」と「母」のロマンスだ。ドゥカブニーがムーアにホンキで惚れる。それゆえに家族のバランスがおかしくなる。急に昼メロのように、物語の足元がぐらつく。どうやら作り手は情に流されてしまったらしい。作り手に必要だったのは人情ではなく、登場人物との適当な距離感、そして冷徹な視線だったのに。





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