約束の宇宙

約束の宇宙 “Proxima”

監督:アイス・ウィンクール

出演:エヴァ・グリーン、マット・ディロン、ゼリー・ブラン=ルメール、
   アレクセイ・ファティーフ、ラース・アイディンガー、ザンドラ・ヒュラー

評価:★★★




 考えてみると、これまでで最も「フツー」のエヴァ・グリーンかもしれない。「ドリーマーズ」(03年)で鮮烈なデビューを飾ったグリーンはその後、妖気たっぷりの佇まい・空気感ゆえ、この世のものではない何か、或いは浮世離れした悪女を演じさせられることが圧倒的に多かった。そのグリーンがおフランス映画『約束の宇宙』では、ごく普通のマインドを持つ「母親」を演じる。

 ただし、宇宙飛行士という職業は、フツーとはかけ離れる。見所のひとつは宇宙に行くまで飛行士に課せられる訓練・準備の数々だ。実際の宇宙関連施設で撮影されたようで、なかなかお目にかかれない画が飛び出す。この際、肉体的・体力的な面で男よりも女がどうしても厳しいことを強いられるところも描かれる。ヒロインが意識を失う場面もある。

 ただし、もっとヒロインの負担になる(体力的負担の遠因にもなる)のは、娘との関係だ。まだ幼い子どもを残して1年間の宇宙ミッションに繰り出す。離れるのは綿密な計画が立てられた準備期間も含まれる。まだ、学校に入ったばかりの娘と離れなければならないというのはどういうことか。精神的な面での痛みを炙り出す。

 ここに綺麗事を挟まない。離れていても心が繋がっているから大丈夫…なんて気配はなく、愛し愛されているがゆえの衝突が繰り返される。会える時間は貴重なのに、上手く噛み合わない母と娘。グリーンが辛そうに見えるのは決まって、どんどん変わっていく(成長していく)娘の傍にいられないことを思い知らされるときだ。支えになるのは子どもの頃からの夢…。

 ここに描かれる母と娘の姿はしかし、結局苦しいばかりではない。そう信じるからこそ終幕、「打ち上げ前にふたりでロケットを見る」という約束が絡んだエピソードがある。母は娘のためにある規則を破る。本来それは絶対にあってはならないこと。責められても仕方ない。作品そのものの否定に繋がりかねないそれなのだ。けれど許す。大半の人はそれを許すだろう。作り手は生きる上で最も大切なもの、その力を信じている。

 グリーンの役どころはこれまで宇宙へ旅立った多くの女性宇宙飛行士たちの象徴なのだろう。まだまだ女に厳しい世の中。彼女たちはヒロイン以上に大変な苦労を乗り越えミッションに挑んだはずだ。映画は彼女たちへの、そして働く女たちへのエールだ。グリーンが妖気の代わりに滲ませる母性に説得力があって本当に良かった。勝因はそこにある。





ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク