ビリー・アイリッシュ:世界は少しぼやけている

ビリー・アイリッシュ:世界は少しぼやけている “Billie Eilish: The World's a Little Blurry”

監督:R・J・カトラー

出演:ビリー・アイリッシュ、フィニアス・オコネル、マギー・ベアード、
   パトリック・オコネル、ジャスティン・ビーバー、ケイティ・ペリー、
   オーランド・ブルーム、7:AMP

評価:★★★




 のっけから驚かされる。13歳のビリー・アイリッシュが「Ocean Eyes」を歌っているのだ。13歳、そう、あどけない少女なのだ。あんな幼い子どもが「Ocean Eyes」のヴォーカリストだなんて、早熟も良いところ。優れた才能は若いうちからそれを迸らせるものなのか。13歳の頃の自分を思い返すと、心底恐ろしい。

 『ビリー・アイリッシュ:世界は少しぼやけている』はアイリッシュが主人公のドキュメンタリー。まだ20歳にもなっていない娘っ子のドキュメンタリー、素材は揃っているのかと心配するものの、全くの杞憂。アイリッシュ好きなら堪らない映像の宝庫。よくぞちゃんと撮っていた。デビュー前から製作を想定していたというより、両親がショービズ界の人間なのが大きいと見る。

 1stアルバム「When We All Fall Asleep, Where Do We Go?」、そのプロモーション、ライヴ活動風景を切り取った物語を通じて、アイリッシュのプロ意識が浮かび上がる。周囲がどれだけ褒めても自分が納得できないときは表情が曇る。ファンを自分の一部と言うアイリッシュにとって、万人受けする曲ではなく歌いたい曲を歌うことができるステージは自分を表現するいちばんの場なのだろう。彼女の中には確固たるヴィジョンがあり、それが実現できたとき、彼女の笑顔は本物になる。

 そんなアイリッシュが家族の前では途端に「妹」や「娘」でしかなくなるのが面白い。公の場ではプロフェッショナルでも、家に帰ると(さほど贅沢な家に見えない)、スイッチがオフになる。楽曲を寝室で作るというのは本当で、ベッドの上で胡坐をかいたアイリッシュがマイクを前にレコーディングしていく様子が興味深い。傍らの兄フィニアスがほとんど恋人風なのに苦笑しつつ(ここまで相思相愛なんだなぁ)、家では我がままや弱音が飛び出すこともあるのにはホッとする。ちゃんと10代の女の子なのだ。ボーイフレンドとのすったもんだも出てくるのはご愛敬。

 物語が進むにつれてアイリッシュの名声は膨れ上がるばかりだ。つまり気の休まるときはほとんどなくなっていくわけで、それに必死に対処するアイリッシュには同情を覚える。そんな彼女を支えるのが家族。音楽的には兄フィニアスが、マネージメントと精神ケアは母親が、家族を後ろから見守るのは父親が…といった印象。母親はステージママになる一歩手前に見えなくもないものの、他の家族同様、その愛情は本物。それだからアイリッシュはこの怒涛のスター街道を乗り切れているということなのかもしれない。全く余計なお世話だけれど、いつまでもこの形態を守れるわけはないわけで、そのときアイリッシュがどういう方向に向かうのか、楽しみなような怖いような…。

 終始面白く観たものの、演出には注目をつけたいところが多々。楽曲の使い方がやや中途半端で、「Bury a Friend」「Bad Guy」「No Time to Die」といった代表曲は楽曲丸々使っても良かった。ライヴシーンももっとじっくり見たいところだ(コンサートフィルムを作っても楽しいだろう)。楽曲製作場面はもっと専門的なところまで突っ込んで欲しかったとも思う。フィニアスの企業秘密ということだろうか。それから…アイリッシュの音楽ルーツについても考察が欲しい。大ファンのジャスティン・ビーバーの前で少女に戻るアイリッシュも貴重だけれど、エイミー・ワインハウスやグリーン・デイが彼女のアーティスト活動にどんな影響を与えたのか、掘り下げても面白かったのではないか。





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