グレイハウンド

グレイハウンド “Greyhound”

監督:アーロン・シュナイダー

出演:トム・ハンクス、スティーヴン・グラハム、エリザベス・シュー、
   ロブ・モーガン、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、カール・グルスマン、
   トム・ブリトニー、デヴィン・ドルイド、マット・ヘルム、
   ジョシュ・ウィギンズ、グレイソン・ラッセル、ウィル・プレン、
   ジェイク・ヴィンティミリア、トーマス・クレッチマン

評価:★★★




 主人公アメリカ海軍アーネスト・クラウス中佐が艦長として乗り込むグレイハウンドは駆逐艦だ。1942年北大西洋、37隻で構成される護送船団の護衛が任務。戦争映画では潜水艦が活躍することが多いけれど、それは敵国ドイツに任せる(もちろんUボートだ)。『グレイハウンド』は駆逐艦と潜水艦の対決を見せ場に置く。だからと言うわけでもないけれど、海の中には沈まないグレイハウンドなのに、少々潜水艦映画の気配がある。

 今の時代ならパソコンを使って敵との対決に備えるのだろうけれど、この時代はまだまだ人間の頭と体力が物を言う。図面を使って状況を整理。海の中から聞こえる僅かな音が手掛かり。双眼鏡を使った目視も重要だ。各持ち場、それぞれが己の仕事をこなし、それをまとめ上げるのが艦長の役割。バカではできない。頭脳が全速力フル回転。(不謹慎な言い方になるけれど)戦争映画の面白さ、ここにあり。

 アーロン・シュナイダー監督は最近の映画にしては短い91分という上映時間の大半を戦闘場面に充てる。荒れ狂う灰色の海の上で繰り広げられる戦いは、大半が駆逐艦内で繰り広げられる。色味は乏しく、舞台が切り替わらず、当然画は単調になる。ただ、そこを踏ん張るのが映画術というもの。編集や音響の力を活用し、次々訪れる窮地をテンポ良く見せていく。映画的に派手な画は放棄しても、語りに執念を見せる。

 ところでこの映画、戦闘場面を通じて炙り出すのは、ありがちな戦争の悲惨さや愛国心なんかではない。リーダーのあるべき姿だ。クラウス艦長はそのために主人公に置かれる(と言うか、他の登場人物は副官を除いてほとんど個性が与えられず、その点はもう少し改良の余地があったはず)。決断力や柔軟な思考あたりはすぐに思い浮かぶものの、他には何があるだろう。

 これまで映画は、戦争のリーダーは英雄として讃えられる存在だった。危険な任務に果敢に挑み、仲間を鼓舞し、己の命顧みず勇敢さを忘れない。大抵は熱血漢になる。ところがここでのクラウス艦長は、大変静かな男と言って良い。どんな窮地でも慌てず、騒がず、取り乱さず、ミスがあっても言い訳はしない。主演と共に脚本も手掛けたトム・ハンクスが狙いを定めたのはそこにあったはずで、クラウス艦長は部下たちとの一定の距離を守りながら、そこに親密な気配を忍ばせる。全ては行動で示す。ハンクスが何も語ることなく、艦長の覚悟を魅せる。すると、艦長の人間的大きさが見えてくる。

 まあ、もっと見たかった描写がなかったわけではない。クラウス艦長は他の護衛艦の指揮も担うものの、その連携プレイがほとんど出てこないのは肩透かし。ドイツ側が仕掛けた群狼作戦もほとんど機能せず、魚雷の発射以外危険を感じる場面は少なかった。余計だったのは護送船団からの労いの歓声で、これはクラウス艦長の性格を考えると画と溶け合わない。もっと言うと、艦長の愛する女性も意味ありげに出した割りに大きな余韻は作れなかった感あり。良くも悪くも、艦長ワンマンショー、なのだ。





ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク