ノマドランド

ノマドランド “Nomadland”

監督:クロエ・ジャオ

出演:フランシス・マクドーマンド、デヴィッド・ストラザーン、
   リンダ・メイ、ボブ・ウェルズ、スワンキー

評価:★★★★




 ノマドとは昔からここに描かれるような人々のことを指していたのか。自由を愛し、勝手気ままに自然と戯れる、牧歌的なイメージから大きくかけ離れる。日々の暮らしは苛烈という言葉が相応しく、勤労に追われる生活の方がよっぽど楽に見える。

 けれど、彼らは確かな意思を持って、ノマドであることを選んでいる。ホームレスではなくハウスレス。そこには彼らにしか見えない何かがあるはずで、クロエ・ジャオが『ノマドランド』の画を通して語り掛けるのはそこのところだ。したがってこの映画には「解」などというものは与えてくれない。しかし解がない代わりに、ノマドの生活を追体験させてくれる。

 そしてジャオが選んだのは、フィクションとノンフィクションの融合だ。主人公がノマド暮らしの中で出会う人々は実際のノマドが演じていて、彼らとの掛け合い・交流を通して主人公が己の居場所を見つけ出す作りになっている。見所は本物のノマドたちの生き方そのものにあるのだ。リンダ・メイ、スワンキーら本物ノマドたちの味のあること!孤独と自由が溶け合っている。

 主人公はだから、言わば狂言回しだ。彼女に与えられるのは夫の死と金融危機により全てを失ったというバックグラウンドのみ。ノマドたちの生活にいかに実感を持って触れていくか、それが嘘臭く見えては成立しない構成。そこで我らがフランシス・マクドーマンドだ。マクドーマンド史上最も「普通」なヒロイン。彼女に身を捧げるマクドーマンドは、その身体をスポンジにするがごとくノマドの生き様を血肉としていく。ここにリアリティがあるから、狂言回しでもちゃんと「主人公」であり、かつ自らのストーリーを語ることも忘れられない。

 ジャオはマクドーマンドを絶対的に信頼している。余計なセリフもエピソードも一切ない。雄大なアメリカの自然とマクドーマンドのシワだらけの顔(良い顔!)さえあれば、全ては詩となるのだ。余白たっぷりで、その余白に思いを馳せられるところが良いのだ。思いとは記憶でも夢でも何でも良い。

 あるノマドが言う。この暮らしにはちゃんとした「さよなら」がないのが良い。「また、どこかで」と声を交わして終わる交流が胸に沁みる。哀しみや喪失感を湛えたノマドたちは、己の車でどこまでも行く。途切れることなく続くアメリカの道。彼らは社会から遠く離れたところで生きていても、それだけは信じているのではないか。





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