ミナリ

ミナリ “Minari”

監督:リー・アイザック・チョン

出演:スティーヴン・ユァン、ハン・イェリ、ネイル・ケイト・チョー、
   アラン・キム、ユン・ヨジョン、ウィル・パットン

評価:★★★★




 他所の国からある家族がアメリカへやってくる。狙うはビジネスの成功、一攫千金。アメリカン・ドリームはいつの時代も相当魅力的なようで、『ミナリ』では80年代、父と母、娘と息子、祖母という構成の韓国人家族がアーカンソーへ。父の掲げる夢は、未開の地に農場を開くことだ。

 案の定、幸先はよろしくない。母は顔を曇らせる。無理もない。家はトレーラーハウス。雨漏り激しく、トルネードが来れば避難覚悟。周りは木と土以外何もない。父と母は近くの工場に向かい、二足のわらじ。アメリカン・ドリーム厳しい。生活苦しい。夢と現実の狭間にハマり込んでしまう様、家族単位のそれゆえに派手さはないものの、かえって胸が痛くなる。けれど…。

 けれどグッと見入ってしまうのは、リー・アイザック・チョン監督のいちばんの興味が「家族」そのものにあるからだ。父の夢に振り回される家族は気の毒なところあれど(スティーヴン・ユァンが父の横暴を慎ましくも説得力を持って演じる。同時に愛が見えるのだ)、それでもなお、画面に広がる画には抗い難い魅力がある。目に優しい緑。落ち着く土の匂い。常に聞こえる虫や鳥の声。大地のうねりが家族を包み込む。大地の眼差しは常に毅然としている。けれど人間を、決して甘やかしはしない。

 大地に包まれた家族、その掛け合いがしみじみと良い。夢は掴むまで苦難の連続ゆえ、家族は厳しい現実に揉まれることの方が圧倒的に多い。彼らの経験は多くの人が知らぬ間に終わるものだ。けれど、それでもなお、彼らの中に昔の自分を見るようで、妙に懐かしいのだ。父と母の諍い。父の真剣な顔。母の苛立ち。原っぱの追いかけっこ。夜の静けさ。季節の匂い。厳しさに裏打ちされたそれらは、郷愁の正しい見せ方と言えるだろう。

 中でも祖母の佇まいに魅せられる。口が悪く、言動も全ての肯定はできない。でもいてくれるだけでパッと世界が明るくなる。祖母と孫の掛け合いは、たいしたそれではなくとも、何か大切なものがちらつく。祖母とのおでかけはちょっとした冒険になる。交わした会話はどんなそれでも宝物になる。祖母を演じるユン・ヨジョンを好きにならずにいられない。

 終幕、家族に訪れる出来事は作り手の姿勢を象徴する。脳卒中で倒れた祖母が一家につきまとう不運と幸運の鍵を握る。チョンは愛しき家族を厳しく見る。優しく見る。どちらにせよ、適当な距離を持って見守る。そして決して彼らを諦めない。そして人生の尊さを信じる。ミナリ(セリ)は逞しく根を張る。チョンが信じる家族の価値観が画面に美しく反射する。





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