カポネ

カポネ “Capone”

監督:ジョシュ・トランク

出演:トム・ハーディ、リンダ・カーデリーニ、ジャック・ロウデン、
   ノエル・フィッシャー、カイル・マクラクラン、マット・ディロン

評価:★




 元々トム・ハーディは大芝居を魅力的に見せられる力のある俳優だけれど、今回はいつにも増して気合いが入っている。何しろ演じるのは、これまで何度も映画で描かれてきた伝説のギャング、アル・カポネだ。全編ハーディ ショーと言って差し支えない出ずっぱり、大芝居が連続する。

 しかし『カポネ』でハーディの努力は決して報われない。メイクの力を借りて晩年、認知症を患うカポネに扮したハーディは、充血した目と真っ白な肌が強調されることもあり、病人を通り越してほとんどヴァンパイアの趣。ハーディが演れば演るほど、もはやカポネではないと嘆くハメに…。

 おそらくジョシュ・トランクが目指したのは、栄華を極めた怪物カポネの纏う、常人には計り知れない孤独を描き出すことだったはずだ。ところがここでは、何をするにしても自分では上手くできない老人(と言っても48歳)の苦しみやもどかしさばかりが前面に出る。妻や息子たちがカポネの扱いに苦労する様は、ほとんど介護ドラマだ。

 また見方を変えるならば、元怪物を見世物にしている。涎を垂らし、小便を漏らし、大便を撒き散らす。現実と妄想の区別がつかない。見開かれた目は焦点が定まらない。葉巻代わりに吸うのは人参。喜怒哀楽を所構わず周りにぶつける。何と言うか、とても薄情なことだけれど、このカポネからは「惨め」という言葉しか連想できず、その姿を執拗に追いかけるトランクに不快さすら感じるのだ。もちろんカポネは「惨め」だけでは説明できない人物だ。

 ふと思う。もしかしたらトランクは、認知症をきっかけに己が創り上げた禍々しき迷宮に迷い込んでしまった怪物を、デヴィッド・リンチ映画風に描き出したかったのかもしれない。誰が救うこともできない、その無慈悲な顛末にはしかし、リンチ映画の妖気は一切見当たらない。ひたすらの混沌の奥に広がるのは困惑だけだ。

 もちろん話は機能しない。困窮に苦しくカポネがまだ大金を隠しているのではないかと睨むFBIは弱い者苛めしているみたいだし、「オズの魔法使」(39年)ネタは完全に浮き上がっている。そしてトドメは、やっぱりか、ハーディだ。彼がこんなに大味に見える作品は他にないだろう。カポネファンにもハーディファンにも静止し難いシロモノ。ハーディをキワモノに見せるトランクの罪は極めて大きい。





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