リーサル・ストーム

リーサル・ストーム “Force of Nature”

監督:マイケル・ポーリッシュ

出演:エミール・ハーシュ、ケイト・ボスワース、メル・ギブソン、
   デヴィッド・ザヤス、ステファニー・カヨ、ウィル・キャットレット、
   スウェン・テメル、タイラー・ジョン・オルソン、ホルヘ・ルイス・ラモス

評価:★




 『リーサル・ストーム』だなんて、メル・ギブソンが出ているから安易につけられた邦題だと丸分かり。自らB級映画だと宣言しているようなものだ。でも、あぁ、エミール・ハーシュ演じる主人公が自殺願望のある警官というあたり、意外に少しは頭を使ったのかもしれない。どうでもいいけど。

 出来が良くないことは誰の目から見ても明らかだ。史上最大級の嵐の真っ只中にあるプエルトリコ、ハーシュが避難を拒否する住人の説得に向かったアパートが強盗に襲われる物語。警官が素人に仕事を手伝わせる。敵に襲われて上に逃げる。取り残された人々は訳ありの者ばかり。けれど、こんなのは大したことではない。むしろ珍作になる手助けをする、些細な突っ込み所だ。

 大らかさを感じさせるのは何と言っても、危険なはずのアパートがちっとも危険に見えないことだ。とんでもない嵐が接近中なのに、部屋の中に入ればあらびっくり、安全を絵に描いたような頑丈さで、ここでじっとしていた方が命が助かる可能性大。ハーシュ警官にもバカバカしい演出がなされる。風呂場で拳銃を口に入れていたのに、次のカットでは飯をもりもり食っていて死ぬ雰囲気ゼロ。翳りは完全にファッションとなる。ハーシュは中年太りまっしぐらだけど。

 けれどこの映画、B級ファンの期待を平気な顔して裏切るので、駄作認定はできても、決して珍作認定はできない。この映画で誰もがいちばん関心を寄せるのは、元警官のギブソンがいつ大暴れするのかという点、そして住人のひとりが飼育している謎の獰猛生物がいつ解き放たれるかという点になる。そして映画は、恐ろしいまでにこの二点に無視を決め込むのだ。

 ギブソンは身体の調子がよろしくなく透析必須。電気が切れたら一大事だ。この設定を丸っきり無視したギブソンは挙句、中盤にプチ暴走した後、あっさり退場してしまう。住人に瀕死の重傷を負わせるほどのの猛獣が隠された部屋は、終盤に遂に開かれる。ところが、何かの影が飛び出してきた直後、画面は切り替わりエピローグへと突入だ。ナニコレ。消化不良もいいところ。

 B級映画は決して悪いものではない。むしろ見せたいものがはっきりしているそれは、話や人物に勢いが感じられて楽しいものだ。そこには細かいところを気にさせないヴァイタリティに似た何かがあるからだ。この映画はおそらく最初からB級を狙っただろうに、何を目玉にしたいのか、最後まで焦点を合わせられなかった。ナチスやら人種問題やらを担ぎ出して得意気になっている場合ではない。





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